8月13日

「なんかやることある〜?」

「渚くんは座ってていいよ〜」

 ばあちゃんたちがキビキビ動いて食器を片付けていく。昨日も夜まで宴会みたいになってたのに、よく眠くならないよな。

「なぎさ〜ボールあそびしようぜ〜」

「しよ〜しよ~」

 親戚の小さい子たちに呼ばれて外に出る。

「そ〜れ!」

 蹴ったボールをうまく他の子に回す。毎年やってる遊びだけど、年々上手くなってくのが少し楽しい。でも、なんか物足りないんだよな……去年は思わなかった気するけど……まぁ子どもとの遊びだし仕方ないか。

 そういや束沙は今何してっかな。昨日窓から見たとき、ちょうど束沙がいてうれしかったな。……うれしかった? いやまぁ友だちに会ったらそりゃテンション上がるけど……。

「なぎさっ」

「え、ぅわっ!」

 顔面にグニュッと当たり、思わず尻もちをつく。

「ってぇ……」

「だいじょ〜ぶ?」

「頭でもわるいのか?」

「はぁ? いや、頭は悪いけれども……!」

 顔を拭うと少しジャリジャリする……。

「ちがった! ちょ〜しわるいのか?」

「いや、ちょっと考えごとしてただけ」

「へぇ、変なの〜」

「変なのっ?!」

 とりあえず顔は洗っといたほうがいいか。

「渚? 遊んでたんじゃないの?」

「顔にボール当たっちゃってさ、洗いに来た」

「……どこか具合悪いの?」

 母さんに本気で聞かれる。別にどこも悪くないんだけどな〜……なんでだろ?

「あいつらにもさっき言われたんだけど、俺そんな変なん?」

「う〜ん、なんというか、いつもの渚じゃないというか、バカさ加減が少なくて逆にバカになってる感じかな」

「ディスられてる……」

 そういや前にも同じこと言われた気がする。

「あ、最初のバカは良い意味のバカだよ?」

「フォローになってねぇ!」

 母さんは軽く笑って部屋に戻って行く。マジでど〜ゆ〜こと?

「あ、母さん待って、顔拭く用のタオルってどこにある?」

 洗面台で水を顔面にぶち撒けた後、タオルに顔を埋める。鏡を見てもいつもと変わらない俺の顔しか写らん。どこに具合悪い要素があるってんだ?

「渚、そろそろ帰るぞ?」

「ほ〜い」

 ばあちゃんたちから大量にもらった野菜やら果物やらお菓子やらを乗せる。毎回めっちゃもらってるけど食べ切れねぇんだよなぁ……あ、そうだ。

「なぁ、束沙にお裾分けしてもいい?」

「束沙くんに? まぁ確かに毎年、無理矢理食べてるもんな」

「だろ? 俺らだけじゃこの量はムリだって」

「ん〜、母さんも了承したらな」

「聞いてくる!」

 母さんはばあちゃんたちと話してる。

「……、あ、渚。ちゃんと挨さ」

「2日間ありがとうございました! 本当にお疲れ様です! 料理美味しかったです! お邪魔しました!」

 ばあちゃんたちは口々に返事をする。母さんも最後の挨拶を言ってから家を出る。

「で、母さん、今日もらったの束沙にお裾分けしてもいい?」

「え、束沙くんに? う〜ん……そうね、いつも食べ切れないしね」

「ありがと!」

 車に乗って早速メッセージアプリを開く。

「束沙の冷蔵庫空けといて!」

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