第27話 バレちゃいました

「エリーさん、お話っていうのはどういったものでしょうか? 愛の告白とかだったら私は席を外したほうがいいかしら」

 ニヤニヤしながらエリーを見る。

「なんでこの私が愛の告白なんてするのよ。ディーネにも是非話を 聞いてもらいたいわ。アレンのことはディーネが一番よく知ってい るみたいだし」

 若干顔を赤らめながらも、すぐに冷静さを取り戻しアレンを見つめる。

「な、なんだよ。めんどうなことには答えないぞ」

 アレンはエリーの嘘を見抜く真っ直ぐに見つめる眼に戸惑いをみ せる。

「私が話したいことは二つよ。答えたくないことは答えなくていいわ」

「わかったよ。でも手短に頼むな」

「努力するわ」

 エリーはテーブルに置かれた水を一口飲むと神妙に話し始めた。

「まずは一つ目ね。グランシーヌに帰ってあなたのことを調べたわ」

 その言葉にアレンはピクっと目が動いた。エリーもその変化に気づいたが続ける。 「アレン・フリッツ。二年前、魔王を討伐した勇者クラウス率いるパーティーの一人。ここまでは間違いないかしら?」

 アレンはどう答えるか迷いながらも、どうせエリーには見抜かれ てしまうだろうと観念する。

「あぁ、そうだよ」

 アレンもエリーも共に表情を変えない。

「そう……続けるわね。実力は精々冒険者としてCランク程度なが ら【無限】という二つ名が表すよう、当時存在する唯一の無限袋を所持していた為、パーティーの荷物持ちとして迎えられる。魔王との戦いの際、実力の見合わないアレンがエレナ・ライナスを盾にしてエレナは命を落とす。その責任を問われると思ったか、王都から 逃亡した」

 その時、ディーネが両手でテーブルを叩いて立ち上がる。

「ちょっと待ってください! 誰がそんなことを……ウソばっかりです。全部ウソです」

「落ち着け、ディーネ」

「でも……」

「でもじゃない! まだ話は終わってないぞ」

 アレンは腕を組んで落ち着いて話を聞いているように見えるが、 小刻みに体が震えているようにも見える。ディーネもそれを見て、 黙って椅子に座る。

「とにかくアレンについて私が調べられたのはたったこれだけ。ち なみに魔王討伐の調書は勇者クラウスの証言を下に作成されていた わ」

「あの男……」

 ディーネは再び怒りが沸き起こっているようだった。一方アレン はハハッと乾いた笑い声をあげる。

「それでエリーはそれを俺に伝えてなにがしたいんだ? 英雄になるはずだったエレナを死なせてしまった俺を責めにきたのか? 捕まえて責任でも取らせようっていうのか?」

 冷めきった声をエリーに投げかける。

「まさか。私はこの調書にはおかしな点が多いと思っているわ。まず目の前にいるあなたがアレン・フリッツなら実力がCランク程度 なんてあり得ない。どう低く見積もってもAランク以上の実力はあるわ。それにあなたは決して誰かを犠牲にして生きようとする人間じゃない。まだアレンとは二日程の付き合いしかないけれど、それ だけは誰が何と言おうと譲らないわ」

 強い口調で言いきるエリーの言葉で、ざわついていたアレンの心は落ち着きを取り戻していった。ディーネもうんうんと頷いている。

「俺はそんな大層な人間じゃないよ。で、その嘘だらけのクラウス に文句の一つでも言ってくれたのか?」

「魔王との戦いを見ていない私にそんなこと言えるわけがないじゃ ない。そこで私の二つ目の話よ。あなたをグランシーヌ第四騎士団団長に任命するわ!」

 エリーはそう言って、立ち上がりビシッとアレンに向かって指を差す。

 このいきなりの提案にアレンも驚きを隠せなかった。

「任命するわって、そんな簡単に団長なんてなれるわけがないだろう」

「大丈夫よ。現役の団長の推薦があれば問題ないわ。それに悔しいけど実力だって私よりも数段上でしょ。まぁ、最初は下の団員達から文句もでるでしょうけど、あなたの実力を知ったらすぐ収まるわ。 団長になって活躍してこの調書が間違っているって分からせてあげ ればいいのよ」

「断る!」

 アレンは悩むそぶりも見せず即決した。

「え? なんでよ」

「俺にはこの店があるからな。団長なんてやっている暇はない。じゃあ話は終わりだな。もう遅いから俺はもう寝る。エリーも泊まる 宿がないんなら隣の部屋使ってくれて大丈夫だから。後は任せたデ ィーネ」

 アレンはそう言うと不機嫌そうに寝室の方へ入って扉を閉めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る