第14話 アレンのバカ
「だれが変態さんだ!」
アレンのツッコミに微笑みながら、ディーネはまたもやリュックの中に手を入れる。すると中から明らかにリュックの容量を超える 大きさのテントが出てきた。エリーはそれを見ると子供が新しいお もちゃを見つけたかのようにリュックに飛びつく。
「ディーネ、これもしかして無限袋なの?」
「そうですよ。こういう商売をしていると便利ですからね」
確かに商売人にとって無限袋は喉から手が出るほど欲しいアイテムだろう。なんせ物がいくらでも入るのだ。普通なら物を仕入れる際も、移動のことを考えるとあまり無理はできない。しかしこの袋があれば仕入れたいだけ仕入れて売ることができる。 騎士団や冒険者にとっても、遠征する際などパーティーで荷物を分 担して持たなければならないが無限袋があれば楽に移動できる。まさに夢のようなアイテムだ。
だがそれはユグドラの雫と並ぶ伝説級アイテムでグランシーヌ騎士団でも所持していない。どうやって作られているのかも不明である。実際エリーも実物をみるのは初めてだった。
「ねぇ、これどこで見つけたの? 本当に物が無限に入るの?」
「う〜ん、話すと長くなりますし無事に町へ帰れたらじっくり教え てあげますよ。とりあえず着替えてきてください」
「絶対よ、絶対だからね」
名残惜しそうにリュックから離れ、テントに入っていった。アレンはエリーが着替えている間、流れてくる汗を手で拭いなが らマグニー火山の方向を見つめる。とある理由でアレンはサラマンダーと会うのは今回で二回目となる。その時の思い出は決して良いものではなかったので、あまり踏み入れたくはない領域だった。だからといってエリーを一人で行かせるわけにはいかなかった。 人間嫌いのサラマンダーに何の策も無しに会いに行っては、一瞬にして黒焦げだろう。そう考えるとグランシーヌも無茶な任務を任せたなと思うが、王 女の命がかかっているとなれば仕方のないことだったのかもしれない。偶然とはいえ、昨日エリーと出会うことができてよかったと思ったその時、テントからエリーが出てきた。
着替え終わったエリーを一目見た時、目を奪われた。柔らかくふんわりとしたブラウスに、青の色合いが美しいロング スカートを着たエリーが恥ずかしそうにゆっくりと歩いてくる。これまで鎧姿しか見たことがなかったが、ディーネの服を着たエ リーの姿はスラっと細い手足と細い体に似合わず強調する胸が印象 的だった。それは完全にアレンの好みに合致しており、特にほどよく大きい胸にはついつい目がいってしまいそうになる。
「なんか恥ずかしいわ。それにスカートなんて滅多にはかないのに ……」
エリーは日々騎士団で過ごしてきた。騎士団では常に鎧に身を包 み鍛錬を欠かさず行ってきた。非番の日も何があっても動きやすい ように、ズボンを履いていた。スカートなんて何か特別な催事があったときのドレスでしか身に着けることはなかった。
「エリーさん、よく似合っていますよ。サイズもピッタリみたいですね」
エリーとディーネの背格好はよく似ていたのでサイズは問題なかったが……
「ちょっと胸がきついけど、それ以外は大丈夫だわ」
ディーネも決して小さくはないが、エリーに比べると若干劣るサイズであった。ついついアレンもディーネに目がうつる。
「え? なんか言いましたエリーさん。それにアレン。どこを見ているんですか?」
ディーネの纏う魔力が高まる……
「い、いえ。ちょうどよかったわ。サイズピッタリ」
「ディーネ、大きさだけが全てじゃないぞ! 形だって重要だ」
エリーはともかく、アレンのフォローは間違っていたようで……
「アレンのバカァァァァァァ」
ディーネが叫ぶと同時にアレンの上空から大量の水が降ってきて、 びしょ濡れになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます