第2話 配信

 神外はダンジョン攻略者になった。

 武器は自身に発現した異能〈肉体強化〉だけだった。

 剣や銃を買う金はなかった。

 攻略者に登録すると、「オープス」と言う自律型のカメラ・ドローンを渡された。

 オープスというのは、少ない充電で1週間は動くとされている配信用のものだった。

 ダンジョン攻略者は配信を行う義務があった。

 かつて「嘘をつく汚い大人たち」がいたせいだった。

 渡されてすぐに、配信のスイッチを入れると、ドローンのランプ赤く灯った。


 ●新人さんだ

 ●愛想のない顔だ


 配信視聴人数がドローンに表示される。

 その数8人。

 コメントを神外が見ることはなかった。

 神外はダンジョンにもぐり込むと、〈肉体強化〉の異能を使って、淡々とモンスターを殺していった。

 スライム型は中にある核を壊す。ゴブリン型は首を切り落とす。ゴーレム型も中にある核を壊す。

 その知識は淡々と神外を強くしていた。


 ●はぇ~……すっごい手際良い……

 ●有名な攻略者の血筋が何かですかね?

 ●多羅尾なんて聞いたことないんだよね


 神外は普通の攻略者なら1日かかる第1層を3時間程度で完了させると、第2層にくだった。

 第2層にあらわれるモンスターは第1層モンスターに少し毛が生えた程度の強さしかないため、苦戦はしなかった。

 誰かが今の自分を見て、そして愛してくれればいい。

 受動的に受け取る愛を神外は求めていた。

 ただ愛してほしいだけだった。

 第3層……第4層……そうやって、神外は次々にダンジョンを攻略していくと、ついに第5層──つまり、最下層に到着した。

 最下層にはモンスターを仕切るいわゆるボスモンスターが存在しており、その中にある術式を破壊すると、ダンジョンは形を保てなくなり崩壊する。


 ●最下層到達がはやすぎる

 ●本当に初心者か?

 ●怪獣退治の専門家かな

 ●本当に表情ひとつ動きやしない


 神外が挑んだダンジョンのボスモンスターはクモ型の大きなものだった。

 神外は地面を蹴ると、攻撃可能な高さまで跳び上がり、そのボスモンスターの眼球を殴り飛ばした。

 そして怯んだ隙に下に回り込み腕を突っ込み内臓をじこじこと、そして、ずるずるお引きずり出す。

 そして仰け反った隙に足をへし折り移動ができないようにすると、心臓に向けて蹴りを放ち、術式を破壊した。

 すると、ダンジョンが崩壊を始めたので、オープスから光が放たれて、神外はダンジョンの外に転送された。


 ●初心者が単体であのタイプのボスモンスターを討伐するのに必要な時間は約2時間!今回この子が討伐するのにかけた時間は約12分!www

 ●つよすぎる

 ●なんなんですかね?この子は

 ●ひどくこざっぱりしているくせに味が濃い配信の鑑


 神外は異能を解除した。


「まだまだだな」


 ●まだまだなんだ

 ●まだまだなのか……

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