夏の選挙

白川津 中々

◾️

期限前投票に行くとジジババのフェスティバル状態であった。

市民会館にできた長蛇の列。爆音で外を周回する選挙カー。「金よねぇ」「金よ」という即物的な会話が聞こえる中、誰に投票しようかなぁなどと考えていると突如着物の男が登場。「清き一票! 高倉清です!」とトンチキな一斉がこだまする。


「清に一票! よろしくお願いします!」


色めき立つ歳を重ねた女性の方々。巻き起こる「清き一票高倉清」の大合唱。宗教じみている。調べてみると消費税撤廃財源は埋蔵金とかめちゃくちゃなことを言う泡沫候補である。昔の野党じゃないんだから。誰に投票するか決めていなかったし、なんなら誰が立候補してるのかさえ把握していなかったがこいつには入れないでおこうと決意。とりあえず第一党でいいかなという保守的モラトリアムに傾く。政治も何も知らないのだから現状維持という選択が最も賢いのだ。候補者の名前を調べてちゃんちゃかちゃんちゃん。聞こえる囃子によって思考が中断。鼻腔を擽るソースの匂い。出店が出ている。選挙ってこんなんだっけと疑問を挟む間も無く始まる盆踊り。夏。流れる音頭のままふくよかな女性に誘われて見る阿呆から踊る阿呆へ。途中差し出されるスポドリ塩分タブレットを舐めながら汗を流す事十時間。くたくたとなり帰宅。いい運動になったなと満足感のまま寝て、それから一週間が経過。小選挙区は高倉清。比例代表は聞いた事もない党が議席を獲得した。

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夏の選挙 白川津 中々 @taka1212384

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