第6話 続・美術的剝製

 殺人現場は学生寮の2階、北側の部屋だ。角部屋ではなく、隣接している部屋があったがそこは倉庫だった。現場からは正面の扉の外に扉はない。ベランダはあるので、侵入するとしたらそこしかないだろう。だが、窓は内側から鍵が掛かっており外から侵入した場合、どうやって施錠したかは分からない。この学生寮の鍵は、ピッキングができないと言われているが、高等テクニックで開けたとしても中にいるクラリスにバレて通報されるだろう。


 現場に落ちていたボイスレコーダーから、犯人は電話が来た際、先生に対して使ったのであろうことが分かる。他には、メモ用紙が落ちていたが中身は白い紙で、なにか書いた後は残っていなかった。


 第一発見者である女子生徒は、マコットという名でこの学園の風紀委員長であった。見つけたきっかけは、先生に様子がおかしいから見に行くように言われたことだという。いくらインターホンを鳴らしても返事がないので、訝しんで突入したら見つけたらしい。大したものだと思う。いくら嫌な予感がしたからといって、何人が確認することができるだろう。勇敢な人だと感心した。


 それから、女子生徒の死因は抵抗したあとがまるでないことと、体に痕がのこっていないことから、撲殺と絞殺の線が消えたようだ。今日になって、警察が出した答えは『毒殺』だった。2、3日かけて分かったのは、彼女が絞殺されたことと、死が偽装されていたということだけだったようだ。


 彼女の人間関係は、亡くなったディムとメアリィくらいしか友人がなく、他は不明であった。唯一、同じ部活に所属していたマコットがいたが、彼女は今回の第一発見者であり既に疑いの対象に入っていた。だが、彼女は皆が目撃していたためにアリバイがあった。警察はついに行き詰まったのか、数日後に帰って行った。


 クライストにそのことを話すと、彼はどこか安堵した表情を浮かべていた。自分が疑われなくて良かったとでも思っているのだろう。俺は少なくともそうだから。


 事件はまたもや迷宮入りとなってしまったようだ。


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クライスト Zamta_Dall_yegna @Zamta_Dall_yegna

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