第4話 続・一発即死
事件が起きたことによって、運動会の時間が短縮された。午前の部はメアリィの葬式に利用され、午後の部のみ運動会となったのだ。ここまでしても運動会がやりたいとなると、もはや青春の押し付けである。
俺は運動会の間、クライストと行動を共にしていた。事件の犯人として疑われているもの同士、お互いを管理するのは当然の流れだろう。
「こんなに生徒が大勢いるのに、どうして僕らが疑われるんだろうね」
「そりぁあ、事件当初近くにいたからだろうな」
「僕は、怖いよ。誰かに疑われて、勝手に恨まれて殺されるかもしれないじゃないか」
「俺もそれは恐い。俺たちはどちらの事件もたまたま居合わせただけだ。第一発見者になったのは、先日の事件だけだし、はた迷惑もいいところだ」
クライストは、溜息を出して俯くので背中を撫でてやった。慰めのつもりだ。自分も疑われている今、気分は良くない。
亡くなった女子生徒、メアリィは友人のクラリス以外に友達はなく、「実は誰々と仲が悪かった」などの話も上がらなかった。そのため恨まれていた様子もないので、衝動的な感情による殺人だということになっていた。以前亡くなったディムとメアリィは友人であったため、連続殺人事件ではないかという見方もあるため、クラリスは先生により自室内だけで生活をしているらしい。
事件を頭の中でまとめてみたものの、恐怖は一向に拭えなかった。恨みからくる殺人ではないのならば、動機は一体なんだというのだろうか。警察は捜査中の一点張りで教えてなどはくれないだろうが、疑われているこっちとしては知りたいものである。
友人が殺されて殺人犯だと疑われた挙句、自分も命の危険に迫られているかもしれないと言われる恐怖。クラリスはどのような気持ちでいるのだろうか。さぞかし不安で心が押しつぶされそうになっているに違いない。俺だったら耐えられない状況である。一少女が耐えられるとは思えない。
今日は、運動会の間も終わってからも事件は起きることがなかった。無事に一日が過ごせたことに安堵して、俺は部屋に戻った。
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