第3話 一発即死

 あの事件の後、俺はしばらく寝込んでいた。同居人からは散々心配されたが、今は誰にも会いたくは無かった。なんせ、この学園の中に犯人が未だうろついているのだから。誰から恨まれてもおかしくはないこの状況、逆に誰が犯人になってもおかしくはないのだ。


 しばらくの間、布団にくるまっていると帰ってきた同居人から黄色い紙を渡された。どうやら運動会の案内らしい。ディムの葬式の一週間後に、簡易的に運動会をやるのだそうだ。呑気なものだ。俺は、単位を落としたくはなかったので、渋々参加することにした。


 雲一つない空に黒い垂れ幕がよく映える。今日はディムの葬式だった。ディムの友人たちは棺の前で泣いていた。それは人々の同情を誘ったらしく、つられて涙する者もいた。この後に運動会があるとは、どういう顔をしてやれというのだろうか。


 葬式のあと、切り替えの早い教師は教室に戻るなり、運動会で参加する種目を決めるように言ってきた。生徒の一部には反対されていたが、結局種目決めは行われた。リレー、障害物競走、二人三脚とあったが、俺は二人三脚を選んだ。クライストを誘って一緒に組むことになったのだ。


 運動会への日数が少ないので、俺たちは朝夕と休み時間に練習を行った。以外にも、俺たちは息が合って練習は捗っていた。その日も、夕方に紐まで結んで練習をしていたが、そのとき銃声が響き渡った。女子生徒が眉間を貫かれて、倒れた。目の前で起きたそれは、俺にはゆっくりと行われているように見えていた。近くにいた女子生徒の悲鳴があがる。クライストは、周りの人間に先生を呼ぶようにいうなり、倒れた女子生徒に近づいた。脈をとっているようだ。

 「だめだ。脈がない」

 クライストの温度を感じない声が静寂を貫いた。

 「そんな…」

 俺は、目を見開いて固まっていた。


 ディムに続いて、2人目の被害者が出てしまった。俺は衝撃に耐え切れず、クライストの部屋で考え事をしていた。

 「今回の事件は明らかに他殺だったよな」

 「うん。僕の後ろから発砲音が聞こえてきたから、射殺されたのは確実だよ」

 クライストは神妙な顔もちをしている。それもそうだろう。自分の近くに犯罪者がいたのに微塵も気づかなかったのだから。

 「その時、後ろにだれかいたか」

 「いいや。近くにいたのは君と亡くなった彼女だけ。あとの人たちは遠くにいたよ。走って逃げたにしても速すぎる」

 俺たちはまたも疑われてしまうようだ。


 今回の被害者は、メアリィという女子生徒でディムの友人だった。このことから、クラリスと事件当初近くにいた俺とクライストが疑われた。しかし、証拠や凶器が見つからなかったため、事件は迷宮入りとなった。

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