エピローグ:スプラッシュ・サマー、あの日の約束を未来へ。

「本番、10秒前〜!」


テレビ局のスタッフの掛け声とともに、スタジオのライトが煌めく。


ステージ中央には、きらびやかな衣装に身を包んだ《SPLASH☆SUGAR》の5人。

イントロが流れた瞬間、全員の目が合う。


――夏を越えて、私たちはもっと輝ける。


ダンスは、完璧だった。

歌声は、眩しかった。

そして、その笑顔の裏にある“彼との想い”が、胸の奥で光っていた。


客席からの歓声が響く中、ラストのポーズでスポットが落ちる。


「最高……だったね」

「……うん。きっと、今が一番」


控え室に戻ると、スタッフの誰もが「お疲れさまでした!」と拍手で迎えてくれた。

収録がすべて終わり、照明が落ちた後の静かな楽屋――。


「さーて……」

ももかが最初に口を開いた。にんまりとした顔で、テーブルにドンと肘をつく。


「ここからが、本番でしょ♡」


その言葉で、空気が一気に“オフモード”に切り替わる。


「言いたい! もう、聞いて聞いて!!」

「ちょっ……わたしも! 順番順番〜!」

「ねぇねぇ、何回キスした?」「手だけじゃないでしょ!?」「夜、どうだったの!?」

「……お風呂一緒に入った?」「もしかして、もしかしちゃった!?」


しずくが真っ赤になってぷいっと顔を背けると、みんなで「キャー♡」と盛り上がる。


「えっと、わたしは……う、うん。全部……かな、たぶん」

「まって!? ここねちゃん、それ絶対最後まで行ってるやつ〜〜!!」

「ちょ、ちょっと!みんなで言い合おうって言ったじゃん!ずるいずるいっ!」


あおいが照れたように目を伏せながらも、小さく指を立てる。


「私は……2回。ん、朝にもう一回だから……3回?」

「えー! なんで数えてるの!? かわいい!!」

「てか、あおいがあんなに甘えん坊になるなんて思わなかったよ〜」


りりあはもはやツンの欠片もなく、完全にデレ全開で身を乗り出す。


「わたしなんてさ、部屋入ってすぐぎゅーってして、もうくっついて離れなかったし、

あっちからキスしてきて……うわぁ〜〜思い出すだけでヤバい♡」


「りりあ、それ最初から甘えん坊モードじゃん!」

「しかも最後までいったな? 絶対いったな〜?」

「……いったわ。なにか問題でも?」


と開き直ってウィンクしてくるりりあに、爆笑の渦が広がる。


テーブルの上には、撮りたてホヤホヤのスマホ写真たち。

ピースサインでうつる彼と自分、キャラ帽をおそろいでかぶったふたり、

花火を背景にしたキス寸前の一枚――。


それぞれが、その夏を“永遠にした”一瞬。


そして、みんなが同時に言った。


「――また絶対5人で、彼と一緒にディズニー行こうね!」


うん、絶対行こう。

今度はもっと素直に、もっと大好きな気持ちを伝えるために。


その夜、スタジオの灯りが完全に落ちた後。

楽屋のテーブルに残った5台のスマホのロック画面が、静かに光っていた。


それぞれの画面に映るのは、

愛しい彼と一緒に微笑む、自分だけの“ヒロイン”。


その光は、夏を超えて――未来を照らしていた。


――――――――――――――――――――――


「スプラッシュ・サマー・キス♡」~君と過ごした、一度きりの夏。


春風ももか × “図書館で恋を始めた彼”

水無月あおい × “泡の真実に触れた彼”

幽谷しずく × “雨の中で救ってくれた彼”

白鐘ここね × “時を越えて恋をくれた彼”

黒咲りりあ × “配信の海で繋がった彼”


そして、これは“終わり”じゃない。

この夏に恋をして、心と心が重なったように。

それぞれの明日が、きっとまた交差する。


次に涙を流すときは、

うれし涙でありますように。


次に名前を呼ぶときは、

もっとやさしく、もっと近くで。


――だって私たちは、信じているから。


この夏が、

永遠に続いていく物語の

“はじまり”だってことを。


未来でも、君と――笑っていたい。


――――FIN

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