「朝の光と、誓いのモーニングキス」

朝の光が、ミラコスタの大きな窓からやわらかに差し込んでくる。

昨日の夢のような一日が、ゆっくりと明けていく気配とともに、5人の少女たちは、それぞれのパートナーと共に、朝の食堂へと姿を現した。


「おはよ〜……って、あれ? みんな、顔が……」


ももかが最初に口を開く。誰もがまるで“ひと皮むけた”ような、眩しいほどの笑顔だった。


春風ももかは、彼の腕にそっと絡みながら席につく。目元はほんのり赤く、でもその表情は幸せに満ちている。彼に耳打ちするように囁いた言葉は、他の誰にも聞こえない。


「また、一緒に来ようね……ふたりで」


その言葉に応えるように、彼がテーブルの下で指を絡めてきた。ももかは、まるで初恋をもう一度やり直しているみたいに、静かに微笑む。


水無月あおいは、昨夜の余韻を頬に残しながら、彼にカフェラテを手渡している。彼は何も言わず、そのカップを受け取り、指先がそっと重なる。


「目、見なくてもわかる。……好きって、言ってるよ」


あおいの言葉に、彼はうなずいた。ふたりだけの秘密を守るように、彼女は視線を下げながら、唇を近づけた。テーブルの陰で交わされた、小さなキス。その温もりが、二人の間に残る。


幽谷しずくは、手のひらを彼の手の上に重ね、何度も瞬きをしていた。言葉は少ないが、心は満ちている。スープを分け合うその姿は、まるで長年連れ添った恋人のように自然だった。


「帰ったら……また、手、つないでくれる?」


その言葉に、彼はうなずき、軽く頬に口づけた。周囲には気づかれぬように、ほんの一瞬。でもしずくの目は、涙のように潤んでいた。


白鐘ここねは、まだ少し夢見心地のまま、彼の肩にもたれている。パンケーキに蜜をたっぷりかけて、口に運ぶ彼の仕草を、ずっと見ていた。


「……ねえ、また“今日”が来ても、わたしのこと、忘れないでね?」


彼は頷くと、そっと彼女の前髪を撫でて、唇を寄せた。

目を閉じたここねは、甘く微笑みながら、小さく「うん……」と返した。


そして、黒咲りりあ。

彼女は最初から最後まで、彼のそばを片時も離れなかった。朝食のフルーツを分け合いながら、口を尖らせる姿も、昨日とはどこか違う。


「もう……ほんとにバカ。……でも、好き。めっちゃ、好き」


彼は照れくさそうに笑って、そっとりりあの手を引いた。人目につかないテーブルの下で、ふたりだけのキス。

それはもう、恋というより「約束」だった。


5組のカップルが、1枚のテーブルを囲んでいるのに、そこには10通りの物語があった。

お互いの視線が交差し、笑い合う中、全員が心の奥で思っていた。


――また、きっとここへ戻って来よう。

――今度は、“もっともっと”素直な気持ちを、全部伝えるために。


窓の外では、ディズニーランドの新しい一日が始まっていた。

そして、その始まりに、そっと重なるように――。


5人の少女たちは、それぞれの恋人と目を合わせ、誰にも見えないところで、そっと、キスを交わした。

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