第二話私の名前は?
少しの沈黙の間「今からいうことを冷静に聞いてください。あなたは記憶喪失です。記憶が蘇ることがない可能性もあるということを頭の念頭に置いてください。ただ私たちはあなたの記憶を取り戻す協力をするので頑張って取り戻しましょう」医者は青年に対して冷静に語った。青年は医者の笑顔とは裏腹に目が笑っていないことに気づいてしまった。「今日は休みましょう。また明日の午前中に問診しますね」医者は青年に対して優しく言ったあと老婆に礼をして部屋を静かに立ち去った。青年がふと老婆に目を向けると老婆は先ほどのように青年のベットに寄りかかりながら寝てしまっていた。青年はベットの隣にある棚に老婆と見知らぬ青年の写真が飾ってあることに気づいた。老婆と誰かの卒業式の写真のようだ。2人とも笑顔の写真で青年は少しの間それを眺めていた。ふとトイレに行きたくなり立ち上がりトイレへと入った。手を洗う際鏡に自分の顔が映る。先ほど見ていたベットの横にある写真に写っている青年と鏡に映る自分の顔が同じであることに青年は気がついた。老婆は青年の母親らしい。青年は部屋に戻り老婆が寝ていることを確認しベットに横になった。そのまま青年の意識が遠くへと向かっていく。
「龍沙、龍沙起きてもう10時だよ」老婆の声で青年が目を開ける。青年は朝になっていることに気づいた。青年は老婆に対して問いかけた「龍沙って僕の名前ですか?」老婆は優しく返した。「そうだよ〜。名前思い出せない?」沈黙が流れる。青年は老婆に目を向け「すみません。全然覚えてなくて」老婆は先ほどの優しい口調で青年に対して語った「龍沙、坂本龍沙あなたの本名よ」青年は自分の本名を聞いたが思い出せなかった。老婆は青年を気にせず話を続ける「一年も龍沙は眠ってて、ずっと心配してたのよ…」どうやら老婆はずっと青年に付き添っていたらしい。青年は老婆の話を遮り質問をした。「昨日のお医者さんの名前はなんていうんですか?」老婆は少し驚きつつ話をしていた時のように優しく「信士先生だよイケメンだろう…」老婆は先ほどのように話を続ける。青年は医者の名前を聞き違和感を感じていた。ノックをする音。「失礼します。今日の体調はどうですか?」昨日の医者が入ってきた。老婆は医者の方を向き答える。「先生のおかげで本当に龍沙は元気そうです。感謝してもしきれません。」医者は優しく微笑みながら老婆から青年へと視線を移した。「体調はいいんですが記憶が戻らなくて…」青年は医者に対して声を震わせながら言った。すかさず医者が答える。「大丈夫ですよ龍沙さん。記憶はすぐに戻るものではありません。徐々に戻していきましょう」医者は微笑みながら語った。
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