第4話 分かれ道1〜ネイン、キルシェ、ヨルム、ペルシカ〜

 赤信号…ではなく、赤いトビラに入ったネイン、キルシェ、ヨルム、ペルシカは広々とした道を歩いていた。

キルシェ「めっちゃ広いね!この道!」

ヨルム「なーんにもなくて、ちょっとさみしいかも」

ネイン「でも、所々石像みたいなのがあるね」

ペルシカ「え、普通に不気味なんやけど」

ネイン「なんか動きそうだね」

ヨルム「動かれたら困るよ?」

キルシェ「ダンジョンみたいで楽しいじゃん!」

ペルシカ「それにしてもこの遺跡、いつからあるんだろう」

ヨルム「それが、分かってないらしいんだよ。ずっと昔からあったらしいんだ」

ネイン「時計塔もだけど、この町ってよく不思議なことが起こるよね」

キルシェ「なんか、ゲームの世界みたいで楽しいじゃん!キルシェはこの町好きだな〜」

ヨルム「そうだね。その気持ちは分かるよ」

「ここも、ダンジョンみたい!仕掛け踏んだら罠がある、とかあったら面白そ」

カチッ

キルシェがフラグを立てた矢先に、キルシェ自身が何かのスイッチを踏んだ。

キルシェ「…へ?」

ネイン「キ、キルシェ?なに踏んだの?」

キルシェ「わ、分かんない。けどまぁ、大したスイッチじゃないでしょ!」

キルシェがそういった直後

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

とんでもない地響きがしたかと思うと、後ろから巨大な岩が転がってきた。

キルシェ「…わー…」

ペルシカ「…さて」

「「「にげろーーー!!!」」」

4人は、一斉に道を駆け出した。

ヨルム「キルシェー!!フラグ回収早すぎるでしょー!」

キルシェ「ごめーん!フラグ立てるつもりはなかったんだって!!」

ペルシカ「だー!もう!説教はあと!とにかく今は逃げろー!!!」

ネイン「でもこれヤバくない!?この道がずっと続くわけじゃないよ!?」

ヨルム「ネインー!!こんな時に不吉なこと言わないでよー!」

キルシェ「大丈夫だよ!ダンジョンとかだったらどっかに入ってやり過ごせるから!」

ペルシカ「ここはゲームじゃないでしょ〜!」

「いやでも、キルシェが言っていることは当たってるよ」

キルシェ「やっぱそうだよね!…って、あれ?」

キルシェの隣で、聞いたことがあるような声がした。

隣を見ると

ペルシカ「…あー!!白黒の子だ!」

「どーも。こんにちは」

ネイン「こんにちは〜」

ヨルム「悠長にあいさつしてる場合か!」

キルシェ「え、な、なんで!?なんで君がここにいるの!?」

「なんでと言われても…たまたまここの近くを通りかかったら、君たちの悲鳴が聞こえて、一体何事かと思って来てみたんだよ。そしたら私までこの有り様」

キルシェ「なんかごめんって!」

ネイン「思いっきり巻き込まれてるね…」

ペルシカ「これ、どうすればいいの?このままだと私たち、潰されちゃうって!」

「あぁ、それなら大丈夫。説明するからよく聞いてね。ここからもう少し先に、やり過ごすための場所があるんだよ。パッて飛び込んだら大丈夫だから。ヨルムとペルシカが左側に、キルシェとネインと私で右側に行くね」

ヨルム「も、もう少しってどこ!?」

「3つ数えるから、その合図でよけてね。行くよ、1、2、3!」

3人入るのがギリギリなくぼみに、ネインたちは2手に分かれて飛び込んだ。

ゴロゴロゴロ!!!

真横を、岩がすごいスピードで転がっていく。

キルシェ「ひぇぇ…これ、あとちょっと遅れてたら…」

ネイン「ま、間違いなく潰されてた…」

「セーフセーフ。もう出てきて大丈夫だよ」

ヨルム「はぁー…助かった…。ありがとう」

「いえいえ。大したことは何もしていないよ。それはそうと…君たち、なんでこんな所にいるの?ここは、君たちが思っているよりもずっと危険な場所だ。古代のトラップだって星の数ほど仕掛けられてるんだから」

ペルシカ「ひぇっ…ここって、そんなに危険な所なの?」

「そーそー。なんせ古代神殿の跡地だからね。そもそも入っちゃダメだし、奥に行きすぎちゃうと異次元に飛ばされちゃうよ?」

白黒の子は、おどけた様子で軽く言った。

ネイン「君…ノリ軽いねぇ…」

「これが私なんでね♪それはそうと、残りの子たちは?今日は4人で来たの?」

キルシェ「あっ、ううん!違うよ!4、4、3人に分かれてこの遺跡を調査してるんだ!」

「調査…?ってことは、残りの4人と3人のチームは黄色と青色のトビラに?」

ヨルム「そうそう。分かれた方が早いと思って」

「早いと言えば早いだろうけど…。って、残りがそっちに行っちゃったのなら、急がなくちゃだね」

ペルシカ「え?どういうこと?」

「えーっと…ざっくり説明すると、ここはトビラの色と共に3つの難易度に分かれてるんだよ。赤は簡単、黄色は普通、青は難しいって所かな〜」

スラスラとそんなことを言う白黒の子に、4人はそろって目を丸くした。

キルシェ「な、なんでそんなにここのことを知ってるの?」

「え?なんでと言われましても…。面白半分でここに来て、幾度となく死にかけてるからだよ?」

ネイン「本っ当にノリ軽いね!君!」

「まぁまぁ。細かいことは気にせずにさ!」

ネイン「全っ然細かくない!命大切に!」

「大丈夫大丈夫!約束はできないけど、私みたいなのがそう簡単に死ぬ訳ないよ!」

ネイン「あれ、フラグじゃない…よね?」

「いーからいーから!そんなことより、君たちはここを真っ直ぐ進んで。まぁ、行けば分かると思うからさ!そしたら青信号…じゃなかった。青のトビラを進んで!じゃ!」

ヨルム「えっ!あっ、ちょ!」

ヨルムが止める暇もなく、白黒の子はどこかへ消えてしまった。

ヨルム「ホント自由で気分屋な子だね…結局あの子のこと、なにも聞けなかったよ…」

キルシェ「まぁ、また会えるんじゃない?とにかく今は行こう!」

ネイン「キルシェ〜!そっちじゃないよー!」

ヨルム「なんで前と後ろの二択を間違えるの!?」

…ちなみに余談ではあるものの、この後キルシェのナゾの方向オンチが発動したおかげで4人がこの場所を出るのにかなりの時間を要したらしい…。

ペルシカ「なんで一方通行の道で迷うの!?」

キルシェ「ごめーん!だってダンジョンとか、ゲーム好きの血が騒ぐんだもーん!」

ネイン「分かるけど!すごくよく分かるんだけれども!今は脱出に集中しよう!?」

キルシェ「あ!あのつぼ割ったらコインあるかもー!」

ヨルム「あっこらー!キルシェー!!!」

ネイン「つぼ割って許されるのは勇者だけだって!」

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