第2話 これが、本当のバナナ改革だ!辞めて転職したいと思っていた気持ちが、消えていく日

 だから、朝バナナをバカにするなというのに。

 「ひええ…」

 彼が電車を降りたのと同じタイミングで、バナナ男も電車を降りた。

 働き方改革といえ、ゆっくり時間でなく、もっと朝早くから会社にいくべきだったか?

 でも、早すぎて笑われても不都合。

 「あの新入社員、早く出社しすぎだな。ラジオ体操でもしにきたか?」

 そう言われるのがいやで、会社の働き方改革の波に乗ったというのに。

 この状況でやるべきことは、謝罪だ。

 「…今朝、バナナをバカにするようなことを言ってしまい申しわけありませんでした

 すると、意外にも、バナナ男はあたたかい言葉を返してきた。

 「これを食べなさい、おいしいぞ」

 バナナ男が、彼に、黄色く熟れた一本のバナナを渡す。

 「君は、バナナの気持ちを知るべきだ」

 「バナナの気持ち?」

 「ああ。緑色だったバナナも、しっかりと面倒をみてあげれば、黄色くなれる」

 黄色くなれたのは、バナナの気持ちが満たされたからという。

 緑色と黄色という信号機の色が、ここで、バナナの気持ちとつながった?

 バナナは、会社にも着いてきた。

 会社に到着すると、守衛の女性 2人が大爆笑。

 「さすが新社長!」

 「黄色いバナナのコスプレ衣装も、持っていたんですか?」

 「黄色も、あるんですね」

 「面白~い」

 …はあ?

 このバナナ、新社長だったのか!

 バナナを加工するこの会社の新社長を、心の底から尊敬せずにはいられなかった。

 新社長は、電車の中で、会社の最高の宣伝をしてくれていたのだ。

 新社長は、会社と社員思い。

 社員名簿にある通勤住まいまできて、社員と共に会社にいくというサプライズをやるのが趣味でもあるらしい。

 「君?」

 「何でしょう、社長!」

 「通勤は、面白かったな!」

 「…そりゃ、どうも」

 「今日、飲みにいかないか?いろいろ悩む新卒社員に酒をおごるのも、新社長としての役目だ」

 「はい、お供いたします!」

 彼の返答に熱がこもり、転職して会社を移る気持ちが消えていく…。

 「これほど面白い社長の元で働ける会社、辞めてなるものか!」

 新社長は、ビールのコスプレをして待ち合わせ場所にやってきたのだ。

 今の日本に足りないのは、頼れるリーダーとユーモアさ。

 バナナのような新社長がいたら、絶対に推します!

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バナナから逃げ、バナナを愛する男 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935

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