第2話 魚屋

 商店街


 ここはわたしが生まれるどころか、祖父の世代が子供の頃からある由緒正しき商店街である。

 クロはわたしの頭に乗っかり楽をしている。

「さて、やっぱり魚屋から攻めるかな」

 わたしは商店街に入ってすぐの魚屋の前へ来た。新鮮な魚が所狭しと並べられている。よく、母親は「やっぱりスーパーのより魚屋のお魚の方が美味しいのよね。ちょっと高いけど」と言っていた。

 そんな信頼と実績を頼りに、魚屋のおじさんに聞いてみた。


「あのーかまぼこってあります?」

「へいっらっしゃい嬢ちゃん!今日はブリが安いよ!」

 魚みたいな顔の魚屋のおじさんは威勢よく人の話を聞いていない。

「あ、いやブリもいいけどかまぼこを探しているのです」

 おじさんはちょっと拍子抜けしたみたいだったが、「もう正月も過ぎたからねぇ。かまぼこは残ってないよ!」と威勢よく教えてくれた。

「そうですか……」そもそもかまぼこを買いに来た訳ではないことを思い出した。第一また買って帰ったら、それこそ母親に怒られるに決まってる。


「おじさんにかまぼこの素を聞いてみたらどうです?」有能な助手クロが頭の上から助言をくれた。

「あのーちょっと聞きたいんですけどー」

「あいよ!ブリかい? ヒラメかい!?」

「じゃあブリの切り身を一枚……じゃなくて、かまぼこってなにでできてるんですか?」

 魚屋のおじさんは予想外の質問だったらしく、一瞬全ての機能が止まったように見えた。

 …が、さすが魚のプロ!再起動するとすぐに答えてくれた。


「魚だろーな」


 ……全然プロじゃない!猫と同レベル!

「うちは魚屋だからなー、かまぼこのことは正直よく知らねー」

 わたしはがっかりしてため息をついた。「魚屋でも駄目かー」

「まあ待て嬢ちゃん!なら知ってるはずだ!かまぼこの他にチクワやはんぺんも売ってたからな!」

 落胆から一気に尊敬の眼差しに。やはりプロ!


「ありがとうございます。じゃあ練り物屋さんに行ってきます!」

 わたしは希望を取り戻し感謝を示した。

「でも、この商店街には練り物屋はねぇよ。昔はあったけど潰れちまったからなー」

 駄目だこのおじさん。

 もうこれ以上ここで手掛かりは掴めそうもないと思ったわたしだったが……一応、聞いてみた。

「じゃあ練り物屋は何処にあるんですかね?」

 一瞬考えたおじさんはこう教えてくれた。


「そら、築地だろ」

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