第4話 決意

 「綺麗です、灯里さん」


 もう、自分の気持ちは偽らない。

 俺は、変わるんだ。


 「そ、それはあれか?空か?空だよな?」


 「いえ、灯里さんがです」


 「待て、待て。急すぎる、そ、そんな急に言われても。い、いや私も君のことはもう他人とは思えないが、それにしたって順序といものが」


 なんかゴニョゴニョ言ってるんだけど…………大丈夫かな?

 さて、気持ちもスッキリしたしそろそろ帰らないと。

 さっきから携帯がやばい。

 でも、これだけは言ってから帰ろう。

 そう思い、俺はゴニョゴニョしている灯里さんに声をかけた。


 「灯里さん」


 「ひゃっ、な、なんだ峻」


 「ありがとう」


 「へ?」


 「俺を救ってくれて、俺の話を聞いてくれて、俺に大切なことを教えてくれて」


 「本当に⋯」


 「………峻」


 「本当にありがとうございました」


 「頭を上げてくれ峻」


 「⋯⋯灯里さん」


 「待ってるから。あの屋上で、だから、頑張って」


 灯里さんはそれだけ言うと歩き出してしまった。


 「ハハッ、やっぱり叶わないな」


 灯里さんは分かっていたのだろう。

 俺がこれからしようとしてしていることを。

 分かったうえで、何も言わず応援してくれた。


 「待ってる。か、頑張らないとな」


 家に帰ろう。家に帰って、両親に俺の思いを伝えよう。

 友達にも、嘘偽りのない自分を見せよう。

 そして、今度は笑顔で、灯里さんに会いに行こう。


 俺はそう決心して歩き出した。


 「⋯⋯暑」


 やはり、暑い。でも、心地のいい暑さだ。

 なぜだかわからないけど、そう思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る