第30話 まとめ

 六本腕男子。

 腕を六本にする能力。

 六つになった拳全てにメリケンサックとかいう人を殴るのに使う武器をはめている。

 そんなものを六つも普段から持ち歩いてやつなんてさすがにいないはず。スマホや財布、カバンなどなどを誰も持っていなかったことからすると、生前に凶器の類になるものや、こういう状況で役に立ったかもしれない道具を所持していたとしても、この世界には持ち込めないだろうし。ここに来てから入手したものなのは間違いない。

 装着すると腕が六本になるメリケンサックを出す能力の可能性も検討した。

 しかし、六つあるメリケンサックの形が均一には見えないというフジサキの証言もあって、最終的にその可能性はまずないという結論になった。

 いくら手数が多くても、ヒビクやカムイの能力なら近づかせなければ基本的にいい。

 投石の乱れ撃ちみたいなことをしてこないかは警戒する必要あり。

 

 セミロング美少女。

 離れた場所に一瞬で移動できる能力。

 利便性が高そうだが、制限があることがわかっている。

 巨大な腕の男子の前に六本腕男子と共に現れた後、1人で走って逃げる途中に一度消え、待機している仲間2人のいるところを通りすぎた場所に出現していたという一連の流れをフジサキが目撃できたのが大きい。

 金髪と帽子の男女襲撃の時の様子も加えて推定できること。

 移動できる距離は一定。

 自分以外に1人連れて移動できる。

 連れて移動する相手の体に触れていないといけない。

 一度使うと再使用にインターバルが必要。

 前後左右だけでなく、斜め上、おそらく真上や下方向にも移動できる。

 一番厄介かもしれない能力。

 しかし、それはもっぱら奇襲ないし、逃走に使われた場合。

 奇襲はフジサキに頑張って防いでもらいたいところだが、彼女だって同時に何方向も見られるわけではない。障害物を透視できるわけでもない。周囲の警戒をフジサキの能力に頼りきりになってはいけない。最初からそうしていると言えばそうしている。

 奇襲でさえなければ、制限の多い瞬間移動はそこまで怖くはない。

 本当に厄介というか面倒なのは、逃走に徹された場合だろう。

 

 高身長男子。

 攻撃を跳ね返す半透明の壁のような板のようなものを出す。

 明確な跳ね返せる対象、素手や武器を持って攻撃した場合や、触れることで効果を発揮するような能力に対してどういう効果が出るかは不明。地面から生えるカムイのトゲトゲにどう作用するかも。

 とはいえ、相手が見えてさえいればトゲトゲは横側からでも攻撃できる。カムイがヘマしなければ問題なく対処できるように思える。

 カムイ自身は攻撃を跳ね返す能力より、本人の身体能力の方を危険視していた。

 フジサキの証言によれば、高身長男子は反射神経、運動神経が並外れているようだ。

 どれだけ反射神経、運動神経に優れようとも、地面のどこから生えてくるのか予想が困難なトゲに対応するのは容易ではないだろう。それでもかいくぐられて接近される可能性はあるとカムイは用心している。

   

 低身長女子。

 能力は不確定。

 カムイの推定では、様々な武器を出せる能力。

 六本腕男子が装着しているメリケンサックは彼女が出したものという結論になった。

 出したい武器を出現させるのに、頭の中でその形をなるべく具体的にイメージするといった過程が必要なのではないかとカムイは仮定している。

 様々な武器を出せる代わりなのか、ヒビクの拡声器やツインテール女子のブーメランのような特殊な性質は持っていないと見られる。

 実際に複数種類の武器を出したところを確認できているわけではないが、なんの特殊な性質も持っていないメリケンサックを何個も出す能力というのも考えにくい。

 六本腕男子しか武器を装備している様子がないことから、出せる武器の数、というより質量に制限があると予想。

 自らの護身用の武器くらいは出してきてもおかしくないので要注意。

 

 金髪サングラス男子。

 足をバネ状にする。

 強い能力とは言い難い。

 しかし、トゲトゲとはあまり相性が良くないかと思われる。

 数メートルの高さから飛びかかられたら、トゲトゲでは攻撃しにくい。

 飛びかかってこられても、避けることさえできれば、着地した、あるいは着地しようとしている金髪男子を串刺しにすることは可能だろう。

 運動能力の低いカムイが避けられるとは限らないが。

 ヒビクの拡声器の方が相性はいいだろう。

 

 帽子女子。

 光る球を放つ。

 遠距離攻撃の能力である。

 茶髪男子が食らったところをフジサキが目撃。

 そこそこの威力はあるが、一撃で敵を戦闘不能に至らしめるには足らないようだ。

 高身長男子たちに向けて放った時のことも合わせると、連射性能が低いように思われる。実際に連発するところを確認できていないので断定できない。

 飛距離は判然としない。

 スピードはかなり速いが決して、目で追えないスピードではない。

 茶髪男子の肉体に当たり霧散したことから、ロングヘア女子の赤い光線同様、トゲトゲで防げない性質の攻撃ではないだろう。

 金髪男子のバネの足との組み合わせで、高所から光球を打ってくるという戦法をとられたら手こずるかもしれない。

 金髪少年に直接飛びかかってこられるよりは、そちらの方が間違いなく面倒だ。距離をとりつつ、上方からの攻撃。対処しにくい。

 フジサキの見たところでは、帽子女子はとっさの勢いでしか攻撃できないようではある。

 

 シドウマモル。

 爪先を大きな刃に変える。

 常識的に考えて使いにくすぎる能力である。

 本人がでたらめに強いので、それくらいでちょうどいいということなのだろう。

 フジサキによれば、反射神経や敏捷性、単純な運動能力においては高身長男子の方が上。

 いくら格闘能力が突出していても、離れたところから攻撃できるトゲトゲや拡声器ならば有利に立ち回れる。

 

 茶髪男子。

 フックのついた伸縮するロープを出せる。

 応用性は高いが、決定打に欠けるだろう。

 伸ばしたロープを振り回されたら、それなりに厄介かもしれない。

 だが、ロープを伸ばせば伸ばすほど一回転にかかる時間が増えると考えれば、隙が大きくなるということである。

 油断はできないが、脅威的というほどではないと思われる。

 

 ボブカット女子。

 大きな刀剣を出す。

 物陰に隠れながら刀剣を出して消すところをフジサキが目撃。誰かが近づいてきたが、すぐに行ってしまったのだろうと思われる。

 実際に戦闘で用いるところは見られていないので、有しているであろう特殊な性質は不明。

 刀身が伸びるかもしれないので注意が必要。

 

 籠城男子。

 未確認だが、怪力、物体を浮かせる念動力など、重たい瓦礫を運ぶのに活用できる能力だと推測。

 それを使って、自分がいる建物一階の出入りできそうなところを、瓦礫を積み上げて塞いだと思われる。

 怪力や念動力で瓦礫を飛ばせるなら厄介。


 残っているか不明。

 お団子女子。

 物質的なものをすり抜ける能力。

 カムイ曰く、【トゲトゲ】と自分の天敵。

 ヒビクの【拡声器】攻撃は通るだろう。ウシオの能力も通じそうではある。

 まだ残っているとしても潜伏している可能背が高い。

 姿が確認できていないだけで、籠城男子と一緒にいてもおかしくないので要警戒。

 

 単純に人数が多い六本腕男子たち4人チームは後回し。

 シドウと茶髪男子は、どうも仲間を作る気がないらしい。この2人はしばらく放置。

 放っておけば、ほかの者たちを倒したりダメージを与えてくれることが期待できる。ヒビクたちが未確認の2人を見つけてくれることだってあるかもしれない。

 となると狙うのはそれ以外の1人か2人でいる者。

 現在、フジサキが周辺の警戒もこなしつつ、籠城男子の潜む建物を見張っている。

 当然のことながら、まずはそこに向かうことになった。

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