第23話

朝の日の光の代わりに、魔界城の淡い燈火が部屋を満たしていた。


羽青が目を覚ますと、すぐに賑やかな声が耳に届いた。

目の前には、青羽と、ひときわ小柄であどけない顔立ちの美貌美形美少女メイドが向かい合って言い争いをしていた。


周りの9人の美少女メイドたちは、呆れたように肩を落としている。

けれども、羽青が起き上がると、全員ぱっと表情を切り替え、笑顔で一斉に「おはようのチュー」をしてきた。


「ん……おはよう。どうしたの?」羽青が聞く。


「おはようございます♡」美少女メイド達は笑顔。


1番年下の美貌美形メイドは、涙目でぷるぷるしながら振り返った。


「羽青様……私、ただ……みんなでお城の外の泉で水遊びがしたいって言っただけなんです」


「なんで、それを私に言う?勝手に行けばいいじゃん」青羽は投げやりに言うと。


「泉で……お日様に当たりながら……水遊びがしたいんです」

1番年下の美貌美形メイドは涙目。


「知らないし。それ、私に対する嫌味?」青羽はさらに投げやりに言うと。


「嫌味じゃないです!私、生まれてから一度もお日様に当たったことないんです!」


「それは、お気の毒様」


「そ、それは、こっちのセリフです!」


青羽は深いため息をつき、目を細める。


「……魔導大戦がどれだけ、きつかったか?お前わかるか?」


「知りません。私、魔導大戦の時は生まれてないので。私、若いので♡」


「……腹立つ、このガキ」


「魔導大戦が終わって、つまり……青羽姫様が……お城から出なくなってから、帝国に日が差さなくなったんです!」


「私は休暇中だし……」青羽は不貞腐れる。


「魔導大戦が終わってから何年経ったと思ってるんですか!……いつまで休暇中なんですか!」


「知ら」


「えーん……(TT)」

小さな美貌美形美少女メイドは涙を浮かべて袖で目をぬぐう。


羽青はぽかんと二人を見て、

「……青羽、休暇って何年になるの?」

と聞いてみた。


青羽は頬をかいて、ちょっと困った顔をした。


「たぶん……十年くらい?」


「長!!」


隣で他の美少女メイドたちも小声で「やれやれ……」とため息をつく。


羽青は目をぱちくりさせながら、やっと状況が少し理解できてきた気がした。



「みんなで泉に水浴びに行く?晴れてないけど、朝ご飯も兼ねて?

羽青が提案すると、部屋の空気が一瞬でぱっと明るくなった。


メイドたち

「いいですねっ!」


一番年下のメイドは涙を拭いて、ぱあっと笑顔になった。

「やったぁ……!泉……!」


青羽は面倒くさそうに片手をひらひら振る。

「いってら〜。私は留守番してるから〜」



「えー、青羽も来なよ」と羽青。


「……うーん……私はお日様苦手だし、泉、べつに興味ないからいい。どうせ曇りだし」と青羽。


「そっか……じゃ、行ってくるね」


「うん。泉は城の裏手にあるから、階段をずっと下りていくと着くよ」


「ありがと。……じゃあ、みんな、準備しよっか?」



「ラジャー!」と、メイドたち。


10人の美貌美形美少女メイドたちは一斉に立ち上がり、あっという間に動き出した。

タオルやバスローブ、バスケットに入った朝食セットが次々に用意されていく。


年下の美少女メイドがにこにこしながら羽青に近づく。

「羽青様、水浴びって何を着るんですか?裸?それとも水着?」


羽青はちょっと考え込んでから、頬を赤くして答えた。

「……水着にしよ……恥ずかしいし」


美少女メイドたちは「了解です♡」と声をそろえ、いそいそと支度を整える。


城の中はいつも薄暗いが、どこか浮き立つような空気が流れていた。

泉の水音が待っている気がして、羽青の胸がすこし高鳴った。

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