第15話
その頃――人間界の羽青の家のダイニングには、奇妙に落ち着かない空気が漂っていた。
白巴菜は椅子に座ったまま、じっとテーブルを見つめていた。
「……門蔵さん、本当に大丈夫なのですか?」
「ええ」
門蔵は淡々と頷いた。その小さな身体からは想像できないほど落ち着いた声だった。
「羽青は生きています。生命の気配がはっきりある。ただ、空間の位相が違う……恐らく魔界国でしょう」
「……そう」
白巴菜は溜息をついた。
「やっぱりね。連れ去られたのか……」
「大丈夫、助けられます」
横にいたUKが、白巴菜の肩にそっと手を置いた。
「っていうか、あんた誰?」
ノエルが眉をひそめてUKをまじまじと見つめた。
「私の彼氏」
白巴菜が当然のように言い、ノエルの目がさらに丸くなった。
「彼氏!? いつの間にそんな展開に!?」
「深夜にうちに忍び込んで下着を盗んでたんだけど」
「ええええ!?」
ノエルが椅子からずり落ちかける。
「事情は色々あって」
UKは苦笑しながら軽く頭を下げた。
「……ともかく、よろしく」
「う、うん……よろしく……」
ノエルは混乱した顔のまま、白巴菜からUK、そして門蔵へと視線を移した。
「で……そのちっちゃい子は?」
「門蔵聡里さん」
白巴菜は指を差す。
「羽青と結婚した」
「えええええええ!?」
今度こそ椅子から転がり落ちたノエルは、床で呻いた。
門蔵は平然と、ノエルに小さく会釈する。
「初めまして。門蔵聡里です。よろしく」
「はい、よろしく…………もう何がなんだか」
白巴菜は立ち上がり、深く息を吐いた。
「で、どうする? やっぱり助けに行くしかないよね」
「もちろんだよ」
ノエルが床から起き上がりながら、即答した。
「羽青に何かあったらイヤだし! ……魔界ってどんなとこだろう。温泉とかあるかな」
「温泉じゃなくて羽青を探すのが目的」
白巴菜は呆れながら言った。
「門蔵さん」
UKが一歩前に出た。
「あなたが同行すれば、魔界への侵入は問題ない。私も案内できます」
「行こう」
門蔵聡里は短く頷いた。
「……よし」
ノエルは両手をパンと叩くと、決意に満ちた顔をする。
「じゃあ予定立てよう! お菓子とか飲み物とか用意して……」
「……遠足じゃないからね」
白巴菜が肩を落としながら言った。
だが、その声には少しだけ、安堵の響きが混じっていた。
少なくとも、みんなで一緒に行ける――それだけで少し心強かった。
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