第14話

羽青が服を着ると、黒ドレスの少女が一瞥し。


「ドレス似合わないね

違うのにする?」


羽青は「これでいい」と言うと


黒ドレスの少女は「歩くと脱げるよそれ(笑)」


羽青が3歩歩くとドレスはサクッと下に落ちた。


羽青は焦る。「えー」


黒ドレスの少女は落ち着いた口調で「待って、昔着てた私の制服がある」と言いながら、黒ドレスの少女は羽青の脱げたドレスを消去すると制服を羽青に着させた。


黒ドレスの少女は「ピッタリじゃないけど、それなら脱げないわ」


羽青は「ありがとう」礼を述べた。


羽青は手早く制服のボタンを留めると、胸元を少し引っ張ってみた。やはり肩幅も袖丈も微妙に余るが、さっきのようにあっさり脱げてしまうことはなさそうだった。


「…これ、昔あなたが着てたの?」


顔を上げると、黒ドレスの少女――もう黒ドレスではないが――は少し恥ずかしそうに目を伏せて頷いた。


「私が、まだこの城から外に出られていた頃の制服。魔界の学び舎で着てたの」


「ふうむ……」

羽青は胸元に指を当て、制服の生地の感触を確かめた。

柔らかいけれど、どこか、きちんとした匂いがした。


「似合ってる?」


「…うん。まあまあね」

魔界の少女はそう言って口元を隠したが、目は少し笑っていた。


「ありがとう」

羽青は素直にもう一度、礼を言った。

「服をくれるだけじゃなくて、手加減してくれたし、優しいね」


「別に。優しさじゃないわ。あなたが怪我したら面倒だから」


羽青は肩をすくめた。

「そういうことにしておく」


一拍置いて、二人は顔を見合わせた。

どちらからともなく、小さく笑った。


「…歩ける?」


「うん。今度はちゃんと。脱げないと思う」


羽青が試しに三歩、床を踏んだ。

裾は膝のあたりでふわりと揺れたが、崩れ落ちる気配はない。


「…よし」

魔界の少女は胸を張ってうなずいた。

「これなら艶姿を晒さずに済むでしょう。――部屋を案内するわ」


「お願い」


二人は並んで歩き始めた。

不思議と緊張は薄れていて、羽青は肩の力が少し抜けていくのを感じた。


制服の襟もとから、かすかに古い花のような香りが立ちのぼっていた。

きっと、この子がここに閉じこもる前、まだ外で自由に笑っていたころの匂いだろう――そう思うと、胸の奥がほんのりと優しい風が吹くようだった。

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