第11話

「魔界だから、どうしても暗い話しかなくて」

UKは静かに言葉を継いだ。


白巴菜はスプーンを置き、腕を組んで考えるように目を細める。

「でも、姫がまた外に出られるようになったら、その、魔界国、きっと太陽も戻ってくるんじゃない?」


「……理屈的には、そうだと思います」

UKはわずかに苦笑する。


「お姫様って、どんな子なの?」

白巴菜が興味深げに身を乗り出した。


UKは少し視線をさまよわせたあと、ぽつりと答えた。

「……実は、羽青さんと瓜二つなのです」


一瞬、沈黙が落ちる。


それから白巴菜はスッと立ち上がり、思い切り背もたれに寄りかかって大きく息を吐いた。

「……面白すぎるでしょ、それ」


「……私も最初に見た時、驚きました」

UKもつられて小さく笑った。


「お姫様が羽青そっくりで、そのお姫様が閉じこもったまま、魔界はずっと暗いまま……。小説みたいな話じゃん」


「そうですね」


白巴菜は椅子に座り直し、少しだけ真面目な顔になった。

「……、お姫様が外に出る手伝いって、できるのかな?」


UKは目を伏せて、ゆっくり首を振った。

「姫を支えるのは、もともと上級魔導師の役目でした。けれど、御后様を失った魔界国の魔導師達の喪失感は深く……姫様もまた、心を閉ざしたままです。私たち下級魔導師、如きが……」


「……そうなんだ」

白巴菜はスープに映る自分の顔をじっと見つめた。


「でも、もし私の妹の羽青が魔界国のお姫様に会ったら……もしかしたら何か、変わるかもしれないね」


UKは黙ったまま、どこか遠くを見るように視線を上げていた。

その横顔は、不思議と穏やかに見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る