第10話
朝の薄い光がダイニングルームに差し込む頃、白巴菜はUKの手を取って部屋を出た。
誰もいない静かな食卓に二人で並ぶと、白巴菜は軽やかに宣言した。
「私、スープ作るから。貴方はパンを焼いて」
「……OK」
UKは少し不慣れな手つきでパンを用意し、白巴菜はコンロの前に立つ。
鍋の中でブイヨンが静かに沸き、野菜を落とすとやわらかな香りが立ち上った。
やがて湯気のたつスープとこんがり焼けたパンが並ぶ。
二人は椅子を引いて腰かけた。
スープを一口啜り、白巴菜はふと思いついたように尋ねる。
「ねえ、魔界国ってどんなとこ?」
UKはスプーンを置き、視線を下げてからゆっくり言葉を紡いだ。
「……暗い国です。あんまり日が差さない。空は灰色で、時々、赤い稲妻が走る。魔王様が一人いて……」
「魔王様って、どんな人?」
「威厳があります。けれど、娘にはとても優しい方です」
「娘って……姫?」
UKは小さく頷いた。
「女性は、魔王様の娘である姫が一人だけ。後は全員、男性ばかりの国です」
白巴菜は目を丸くし、それから肩を揺らして笑った。
「うわー、いいなあ。姫、ハーレムじゃん」
「……そういう表現もあるかもしれませんが」
UKは少し困ったように視線を泳がせる。
「魔王様の御后様は……人間だったんです」
「人間?」
「はい。とても優しくて、魔界に陽光をもたらす方でした。けれど、魔導戦争の最中に病を得て……亡くなられました」
白巴菜はスープの表面を見つめたまま、声を落とす。
「……それで、姫、一人になっちゃったんだ、女子が……」
「はい。女性は姫のみです。因みに、戦争は終わりましたが……御母上亡き後、姫様は城から出られなくなりました。それ以来、魔界に太陽の陽が差さなくなってしまったんです」
「……」
小さく揺れる光の中で、二人は黙った。
パンの香ばしい匂いと、温かいスープの湯気だけがテーブルを包んでいた。
白巴菜はゆっくり息を吐くと、UKを見上げた。
「……あなた、優しいね」
UKは少しだけ戸惑った顔で、けれど嬉しそうに目を細めた。
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