第8話
二時間後。
羽青の部屋には静かな空気が流れていた。
カーテン越しに射し込む昼の光が、部屋を柔らかく照らしている。
羽青は小さく咳払いをしてから、ベッドに座る門蔵聡里の正面に立った。
「それで……昨夜のことなんですが」
門蔵は目を細め、無言で続きを促す。
羽青は指先をもじもじと絡めながら、途切れがちな声で説明を始めた。
「……ええと、魔導師って人が、部屋に結界を張って、下着を……奪いました」
「なるほど」
門蔵はあっさりと頷いた。
「被害は?」
羽青は視線を泳がせる。
「羽青と白巴菜、各二名、……下着、二枚」
「損害軽微」
門蔵が事務的に言い切ると、羽青は少し顔を赤らめた。
「でも……あの、実は……魔導師に言わなかったんですけど」
「?」
「たぶん……その……下着に……」
声が尻すぼみになっていく。
門蔵はあごに手を当てて静かに考えた。
「何がついているのですか?」
羽青はますます顔を赤くして、俯いたまま絞り出すように言った。
「……ごにょごにょ?が、ついてるかも……」
「……迂闊すぎる」
低い声に責める色はなかったが、羽青はしゅんと肩を落とした。
「でも……別に、何か……ごにょごにょ?されたわけじゃないし」
門蔵は首を傾げ、わずかに目を細める。
「……されたかったの?」
「ちがいます!」
羽青は跳ね起きるように叫んでから、恥ずかしそうに口を押さえた。
「なら……良き」
門蔵はそれ以上問い詰めず、淡々と頷いた。
羽青は胸を撫で下ろし、それからふと思い出したように顔を上げる。
「あの……その……下着……持ってって?……どうするんですか……?」
「知りません」
短い言葉が、あまりにきっぱりしていて、羽青は思わず小さく笑った。
「……すみませんでした」
その声には、どこか安堵の響きが混じっていた。
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