第48話 KQ-111

「2025年7月12日 午前9時45分、茨城県土浦市にある『久遠製薬 土浦研究所』で大規模な爆発事故が発生しました。周辺住民の証言によると、『雷のような音と共に、白煙と黒煙が空を覆った』とのことです。これまでに4名が重体、12名が行方不明とされており、警察と消防が捜索を続けています。


 同社は新たな抗ウイルス薬『KQ-111』の臨床試験を直前に控えており、一部では事故ではなく、何者かによる破壊工作の可能性も指摘されています」


 強志はニュースを見終えて震えた。

 

 雨の朝だった。

 土浦工業団地の外れにある久遠製薬の第七研究棟が、突如として火柱を上げた。


 爆発の直前、研究主任・羽田晶子は不審なノイズをモニターに確認していた。「温度が……おかしい」

 次の瞬間、彼女の視界は真っ白な光に包まれた。


 それは、ただの事故ではなかった。

 **"失われた第5世代のワクチン"**をめぐる、国家と企業と影の勢力の争いが、ここから幕を開けたのだった――。


 久遠製薬の爆発事故は、ただの製造ラインのミスではなかった。

 実際には、内部告発者・神谷誠が**「人間に対する実験記録」を外部に持ち出そうとした矢先、仕掛けられた時限爆弾**が施設全体を吹き飛ばしたのだ。


 彼は姿を消し、研究データの一部だけがネット上の暗号フォーラムに匿名で公開された。


 厚生労働省も警察も、あくまで『事故』として処理する方針を貫く中、元科学捜査班の探偵・真壁隆が、真相を独自に追い始める。



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