第46話 さくらの園の沈黙
茨城県阿見町。筑波山を遠くに望むのどかな住宅地に、その保育園はあった。
認可保育園「さくらの園」。園児の笑い声が響き、地域の評判も決して悪くなかった。しかし、その明るい外面の裏で、ある闇が育っていた。
2025年4月、1通の手紙が県の労働相談窓口に届く。
> 「主任保育士のSによる暴言・恫喝が続いています。新人は毎年潰れて辞めていき、保育士同士も監視し合う空気ができています。助けてください。」
差出人は記されていなかった。だが、その手紙には詳細な勤務時間の記録、録音データの抜粋、そして園長による“黙認”の構図まで記されていた。
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目撃者の声(匿名インタビューより)
「着替えが遅れた子どもに、“何年保育士やってんの!”って怒鳴るんですよ、子どもじゃなくて先生に」
「昼休憩なんて取れません。食べてると、“遊びじゃないんだから”って皿を片付けられました」
「0歳児の子が泣き止まなくて、A先生が泣き出しても誰も助けられなかった。だって、主任に睨まれるから…」
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その保育園では、新人が1年続かないのが常態化していた。労働基準法を超えるサービス残業、主任による公開説教、園児や保護者の前でも感情をあらわにする言動――。
記者の中村莉子は、かつてそこで1年だけ働いた元保育士に接触する。
「私、ここの子どもたちが本当に好きでした。でも……あそこは、子どもの成長を支える場所じゃなくて、大人の支配欲を満たす場所だったんです」
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そして、莉子が手に入れた一枚の写真。
泣いている新任保育士の隣で、主任がにやりと笑って立っている。
その光景を見つめる子どもたちの目は――すべて伏し目がちだった。
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この先、莉子が何を暴き、何を変えようとするのか。
そして「さくらの園」は、どんな運命を迎えるのか。
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