第45話 印刷の町
茨城県小美玉市。のどかな田園と点在する工場群。その一角に、古びた看板を掲げる小さな印刷会社「光陽印刷工業」があった。
設立は昭和四十年代。地元密着で官公庁の広報誌や学校の文集、町内会のチラシなどを手がけ、長らく堅実な商いを続けていた。だが――近年、その社名が地元で“別の意味”で囁かれるようになる。
> 「あの会社、入った人みんなおかしくなるってよ」 「精神やられるって。○○さんの娘さんも最近、退職したんでしょ?」
原因は、ここ数年で相次いで起こった社員たちの“異変”だった。
若手社員・石田は突如出社拒否を始め、「印刷機が笑ってる」と繰り返すようになり、実家に引き取られた。
経理の川田は深夜、社内で印刷機に手を挟まれ重傷。だが、当時会社には誰もいなかった。
営業の古参・宮崎は突然辞表を提出し、行方不明に。
そして、今年に入ってから新人の高畠が事務所の床に崩れ落ち、「紙の中に顔がある」と叫んだのを最後に退職。
最初は偶然、と思われた。だが、次々と“壊れていく”社員たちの姿に、地元ではこうささやかれるようになる。
> 「あそこには、なにか“いる”んじゃないか」
市役所も内々に調査を始めたが、会社側は「根も葉もない噂」と一蹴。だが、地元タブロイド紙の記者・八木下凛は、一連の出来事の裏に隠された“別の意図”を嗅ぎ取り、独自に調査を始める。
そして彼女がたどり着いたのは――
かつて工場で起きた“ある事故”と、その記録をすべて消そうとした者たちの存在だった。
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