第44話探田探偵事務所、今日も通常営業

探田探偵事務所──


今日も朝からゆるく開いている。

といっても、看板は裏返っているし、マヨイは座椅子の上で煎餅を食べている。


 


「助手殿よ。今回の事件、何というかこう……“甘口テイスト”だったな」


「人の封筒事件を料理にたとえないでください。こっちは途中ヒヤヒヤだったんですから」


 


ミナはファイルをまとめながら、小さく首をかしげた。


「……で、結局。封筒を最初に出した人、誰だったんですかね?」


 


「ふむ、それはもはや“社内の空気”が動かしたのじゃ」


「雑すぎる! 絶対誰かが開けたでしょ!」


 


マヨイは空を見上げるように遠くを見て──からの、ふんぞり返りポーズ。


「誰が最初に開けたかなんて、小さなことじゃ。

封筒は帰ってきた。それで十分じゃろ」


 


「それ、探偵として言っちゃっていいセリフですか?」


「いや名探偵ではなく“迷探偵”だから許されるのじゃ」


「便利な肩書きですね」


 


「それに、誰が開けたかなんて……社員同士、もう分かっておるんじゃないか?

あの空気……全員が、誰かを責めるよりも、“笑えたから良し”って顔をしていた」


 


ミナはしばし黙ったあと、小さく笑った。


「……たしかに、そうかもしれませんね」


 


「よし、次じゃ! 次の事件は何じゃ! 封筒の次は……ハガキか? メモ帳か? それとも──謎の俳句か!?」


「事件がどんどん軽くなってるの、気づいてます?」


 


パタン、と事務所のドアが開く音がした。


 


「こんにちは、探偵さん……ちょっと、相談があるんですけど」


 


マヨイとミナが顔を見合わせ、同時に言った。


「「ようこそ、“迷探偵”探田マヨイの事務所へ!」」


 


──こうしてまた、新たな“ちょっとズレた事件”の扉が開かれたのだった。

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『迷探偵 探田マヨイ』の事件ファイル KAORUwithAI @kaoruAI

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