第39話現場は金庫、犯人は風?
草間製作所の本社ビルは、こぢんまりとした
3階建て。
その社長室の一角に、件の“金庫”はあった。
「ほう、これが事件現場……ふむふむ、なるほどなるほど……」
「マヨイさん、見ただけで“なるほど”を3回は多すぎです」
金庫は床に固定されており、重厚な金属製。
ダイヤルとテンキーの両方が付いており、簡単に開けられるようには見えない。
「壊された形跡は……ありませんね」
ミナが金庫のフチを丁寧に指でなぞる。
「つまりこれは、“中から出た”という可能性が高いのではないか?」
「その考え方、ホラー寄りなんでやめてもらっていいですか」
マヨイは金庫の前にしゃがみこむと、突然指を天にかざした。
「うむ。ここから封筒が、ふわりと宙に舞い──」
手をひらひらさせながら、空中をなぞる。
「そして……開いた窓から、風に乗って……シュバァッと飛び立った可能性がある!」
「はい、却下!」
ミナが即座に手を叩く。
「封筒、マスキングテープで止めてあったんですよね? そんなの風で飛びません!」
「ふむ……そうか。では“封筒が風の精霊だった説”もナシか」
「なんでそっち方向に広げようとするの!?」
草間社長は苦笑しながら、ぽつりとつぶやいた。
「……ただ、昨日の夜、私、残業してて……金庫を閉めた記憶はあるんです。
でも……寝不足だったし……もしかすると、ロックし忘れたのかも……」
「ふむ。“うっかり犯”という真犯人か……」
マヨイがうなずいた。
「可能性としては否定できませんけど、社内に3人しか知らない暗証番号で金庫を開けたとなると、やはり内部の誰かが開けたという線が濃厚ですね」
「つまり、副社長・経理主任・社長……この中に、封筒泥棒がいる可能性が……!」
マヨイが金庫の前で振り返り、ポーズを取った。
手を双眼鏡のようにして、社内の廊下をのぞき込む。
「名探偵・探田マヨイ、出動じゃ! その名のもとに、ギャグの真相を解き明かす!」
「いやギャグって言っちゃったらもう、ただの探し物ですからね!?」
ミナのツッコミが、社長室に小気味よく響いた。
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