「まばたき」「ソーダ水」「地図」
新月の夜にランタンを掲げて歩いていると、必ず出くわすのだ。変なやつに。
半年前は月光を溜め込んだ黒曜石を探しに来たやつがいた。ここらの鉱石は勝手に採ってはいけない決まりなので、すぐに警備隊に連行した。三ヶ月前は午前二時半になったら湖の上を歩ける、なんて出処不明の噂を信じ込んだ子供たちが来ていたので、早く帰るように声をかけたら驚いて湖に落ちた。俺は悪くない。先月は確か、ここの地下に洞窟があるんだと言っていた研究者が警備隊に追いかけられながらも走ってきていたな。地図を持って真剣な表情で目の前を通り過ぎて行ったから、俺も何が起きたのか分からなくてまばたきを数回するほど戸惑った。花の香りと薬品の香りが混ざった髪を揺らしていて、不覚にも心の奥が疼いた。あんなに変なやつなのに。
ともかく、今月もきっと変なやつが来るに違いない。夜の見回りは危険なことも多く、何しろ眠いのだが、割のいい支払いがあるのでずっとこの仕事を続けている。眠気を覚ますには湖のほとりに生えているシダのような葉をゴシゴシとこすれば、ソーダ水を飲んだ時のような爽やかな香りが鼻の奥へ風を運んでいく。これが案外良い心地なのだ。
そういえば、先月の研究者もこの匂いがした気がする。
夜は長いし、人生も意外と時間がある。またこの香りが走ってきたら、聞いてみるとしよう。
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