クズとは何か。その深淵と真髄を問う容赦のない作品
- ★★★ Excellent!!!
近親相姦がベースになっていることもあり、激しく人を選ぶ作品かと思います。私も読み始めるのに大変躊躇しました。が、短編版を読んだ結果、最終結末まで書かれたこちらの作品を読むことに決めました。読んで良かったなと心底思っています。
世間から疎まれる事象にのみ救いを見出してしまった人間というのは、意外と多いと思います。この物語の主人公は実姉という存在ですが、例えば幼児に。親に。教師が生徒に。人間以外の動物に。犯罪行為に。希死念慮に。自分、もしくは他人を傷付ける行為に。
そういった「社会不適合に組み込まれた人間の心理」が非常にリアルに、生々しく描かれています。葛藤と自己弁護からの自己否定の流れがあまりにもリアルすぎる。あれ、これ自伝じゃないですよね…?
陽一は一生懸命良い子の仮面を被りながら、心でずっと叫び続けています。これが聞けるのが小説の醍醐味であります。全章、本当に心の声が素晴らしい。
わたしは後半の「なんでこんなことになったのかな!?」という台詞がとても好きで、
「そうそう、ズルズル流れに身を任せてるうちに後戻りできなくなって、本当はこんなところまで来たくなかったのに!って状態になっちゃうんですよね。わかる」
と共感しました。うーん、最高にツライ。
悲しいかな、彼は頭が良かった。要領も良かった。もう少しばかり愚かであれば、救いはあったかもしれない。果たして彼はクズなのだろうか?選択肢自体はクズかもしれないが。でもそれで切り捨てることは絶対に出来ないくらいに悲しい存在。
幸せな顛末にはならないからツライな、と思いながら読んでたけど予想以上にツライ顛末で「秋犬やめて差し上げろ」と声に出てました。容赦なさすぎます。
人間の暗流好きな人には間違いなく刺さる作品です。
いやー、キツかったですねw
でも大好きです。