8-2

「ナタリアは、人の夢を信じて、迷わず支えられる力を持っている!それをあんたが信じてやらないなら、あたしがナタリアを信じてやる!!」

 そのとき、執務室の扉が勢いよく開いて、エイブラハムが飛び込んできた。

「誠に申し訳ございません、旦那様!鉱山に侵入者が現れ、魔鉱石が奪われたとの報告が……」

 エイブラハムは、執務室の様子を一目見ると、おどろいて口をぽかんと開けた。

「り、リナリィ様、クロエ様……なぜこちらに……それに、この部屋の様子は、」

 クロエは、ナタリアの腕をつかんでむりやり立たせた。

「まずい。ずらかるよ」

「は、はい!」

「いいか!!ナタリアは、あたし達と一緒に固有魔法オリジンを見つけ出す!竜の力なんかよりずっと強い、すごい魔法使いになってやるから、よく見てろ!!」

「だれだお前は!さっきから勝手なことばかり言って……!」

「リナリィ、逃げるぞ!早く準備しろ!!」

 クロエが、リナリィに向かってさけんだ。だが、リナリィは、まだスラグをにらんでいた。

「あたしはリナリィ・エンデ!!竜より速い箒乗りライダーだ!!」

「いいから、早く鉄箒飛ばせ!」

 鉄箒に無理やり乗り込んだ3人は、割れた窓から飛び出した。

「……これだけ好き勝手やっておいて、ただで帰れるとは思っていないだろうね……!」

 リナリィ達が窓から飛び出した数秒後、ごう音と共に執務室の壁が崩れ落ち、そのがれきの中から、黒い巨大な竜が姿を現した。

「うっわ、なんだあれ!!」

「あれが父の固有魔法オリジンですわ!というか、知らずにあんな大見得を切っていたんですの!?」

 竜へと変わったスラグは、牙の生えそろった口を開けると、リナリィに向かって炎を吐き出した。

「あっちぃ!!あぶねえだろ、当たったらどうするんだ!!」

「そりゃ、当てる気で吹くだろ。ちゃんと避けなよ」

「のんきなこと言ってないで、クロエもなんとかしろよ!このままじゃいつか焼けちゃうぞ!」

「そんなこと言ったって!今日は大したもの持ってきてないってのに……あっ、」

 そのとき、クロエのポケットから丸いものが落ちる。

 風に乗って落ちていって、コツン、とスラグの長い鼻先に当たった。

「ぎゃっ!!」

 リナリィが悲鳴を上げた。まるで小さな太陽がいきなり現れたみたいに、周りが光に包まれて、何も見えなくなる。

「なんだ今の!!クロエ、なにしたんだよ」

「なにって、魔法灯マジックライトの失敗作を落っことしただけ。帰ってから改良しようと思ってたのに」

「それってもしかして、昨日教室を爆破したやつですの……?」

「……ああ。うん、それ」

 3人は、しばらくお互いの顔を見合った。やがて、だれともなく笑い声が生まれる。

「……まあ、今のうちに逃げましょう。父もカンカンに怒っているでしょうから、しばらくは会いに行けませんわね」

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