第42話 文芸部と生徒会のプライド

 放課後、文芸部の部室は、さながら作戦司令室のような慌ただしさに包まれていた。


「よし! まず、高坂こうさか先生から引き継いだクラス全員分の謝罪文を、全てドキュメントスキャナーでPDF化! その後、手書きの文章を要約しタイピングでテキストデータ化 ……そこまで、九段くだん!」


「了解しました!」


「ここからが本番だ! 皆の者、よく聞け!」


 新垣にいがき先生の、鋭い声が響く。


「謝罪文を、以下の基準で分類する!

 白紙で提出した者は、ランクA!

 反省の色が見られないクズは、ランクAA!

 他責思考で、再犯の可能性がある加害予備軍は、ランクAAA!

 無関心は、ランクB!

 偽善的な文章も、ランクB!

 反省の意思が見られる者は、ランクC!

 そして、心からの改心が認められる者は、ランクDとする!」


「「「了解!」」」


「『謝罪文に何を書くかは自由だ』と、三組の生徒たちは同意した。……ならば、我々もまた、その内容を自由に分析し、複製し、改稿するのも自由である! 総合指揮は、生徒会長の星村ほしむら! データ分析及びAI担当は、高橋たかはし! その他雑務及びSNS担当、松島まつしま新田にった! そして、伊藤いとうの精神的保護は、沢村さわむら! 担当役割は、以上だ!」


「「「了解!」」」


「今回の『伊藤いとう萌夏もか救出作戦』に関する全責任は、顧問である、この私、新垣瞳にいがきひとみが持つ! 我が文芸部のプライドをかけて、全力で実行する! さあ、気合を入れるぞ!」


「「「おうっ!!」」」


 新垣にいがき先生は、九段くだん先輩と星村ほしむら先輩に向き直った。


「なあ、星村ほしむら。生徒会長として、今回のいじめ事件は、屈辱ではないのか?」


「……当然です。この学校の生徒会長として、これ以上の屈辱はありません!」


九段くだんは、どうだ?」


「俺は、ようキャは嫌いですが、それ以上に、陰湿ないじめをする加害者が、心の底から大嫌いだ! 生徒会の威信にかけて、全学年を対象とした、いじめ撲滅活動を、今、この場で始動することを宣言します!」


「異論はないわ!」


 星村ほしむら先輩は、力強く頷くと、俺たちに向かって、深く頭を下げた。


高橋たかはし君、沢村さわむらさん、松島まつしまさん、新田にったさん、お願いがあります!」


「「「「は、はい! 何でしょうか!」」」」


「新たに『いじめ対策部』を立ち上げますが、私と九段くだんを含め、現在の生徒会役員だけでは、人員が圧倒的に不足しています。どうか、皆さんの力を貸していただけないでしょうか?」


「はい! 喜んで、協力します!」


 俺が、大きな声で即答する。


 その流れで、沢村さわむらさんも、松島まつしまさんも、新田にったさんも、生徒会への協力を快く承諾した。


「みんな、最高よ! ありがとう! ……よし、この作業が片付いたら、私が焼き肉を奢ってあげる! もちろん、伊藤いとうも一緒よ! 目標、六時半! 終わらせて、文芸部全員で、伊藤いとうの家に行きましょう!」


「「「はいっ!!」」」


 文芸部は、かつてないほどに一致団結し、全ての作業を定刻通りに終わらせた。


 そして、部員全員で、伊藤いとう萌夏もかの家へと、向かったのである。

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