第13話

中へ入ると、ジャージ姿のドロップが床に座っていた。

「なんか久しぶりだね」

 私が声を掛けると、ドロップは笑った。

「今日は随分と表情が明るく感じます」

「どうせ見ていたんでしょ?」

 私はそう言い、折り畳み式のテーブルを広げた。

「雨音さんは、同級生とはコミュニケーションの取れない方なのだと思っていました」

 ドロップはにこやかな笑みを浮かべそう言った。

「悪口?」

 私の言葉を無視し、ドロップは続ける。

「人とは関わらないのではなかったのですか?」

「あの時は、そう言ったけど」 

 意外と、誰かと一緒に居る時間は楽しかった。

「美空ちゃんと莉子ちゃんとなら友達になりたいって思ったの。それに......」

「それに?」

「私とあの子たちの嫌いな人が一緒だった」

 私は、今日の会話を思い出して言う。それを聞き、ドロップは冷ややかに私を見た。

「こそこそ悪口を言う方々は、どうなんでしょうね?」

「どういう意味?」

「私は、悪口で盛り上がるような方とは仲良くしたくないと思いました」

「ドロップには分からないよ」

 人間じゃないドロップには分からないよ。ずっと独りぼっちだった人間の気持ちなんて。声を掛けられたことが嬉しいの。内容なんてどうでもいいの。

 私は立ち上がり、ドロップに背を向けた。

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