第6話

「お帰りなさいませ」

16時。家に帰った私を出迎えたのは、お母さんでも虹凪でもないドロップだった。

「帰り道にまた出てくるのかと思ってた」

「登校時、嫌な思いをされたと感じたので」

私が言うと、ドロップは胡散臭い笑顔を浮かべる。

「また服が変わってる」

ドロップは、真ん中にスポーツのマークの入った黒いジャージを着ていた。

「前に担当になった方から、若者は仕事を終えると部屋着になるものだと聞きました」

「ドロップって若いの?」

彼は女性からのモテそうな見た目をしているが、年齢不詳だ。自分よりは年上だと思うが、どのくらい離れているのか分からない。

「同僚の中では、若い方かと思われます」

「人間の中では?」

「どうでしょう。大人だと言われたこともあれば、まだまだ子供だと言われたこともあるので」

ドロップは、笑顔を崩さずに答える。

結局、彼は年齢不詳のままだった。

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