第4話

中学校は、町中から離れた山の中にある。坂道が連続するため遠く感じるが、実際は歩いて20分ほどだ。

 雨はパラパラと続いており、白い傘を差して歩く。

「なかなか趣のある場所に通っておられますね」

 学校に着いてすぐ、ドロップはそう言った。ドロップは朝までの白スーツ姿ではなく、爽やかなカジュアルスーツに変わっていた。本人曰く、常に正装だと滅入ってしまうらしい。

「嫌味?」

「いいえ。そのままの意味です」

 この学校、なかなかにボロい。どのくらいかというと、他校の生徒が見ると旧校舎と間違えるくらいだ。

「結構幽霊の話も聞くよ。友達出来るかもね」

 私が言うと、ドロップは首を振る。

「私、未練がましいものではないので」

「でも、人間じゃないんでしょ?」

「はい。涙の案内人でございます」

 ドロップは、まるで人間かのように自然に私の隣を歩いている。

「他の人に、ドロップは見えているの?」

「いいえ」

 ドロップは首を振った。

「さっきから私、何人かの人にじろじろ見られてんだよね」

「はい。一人でじゃべっているおかしな人だと思われているのでしょう」

「……」

 もう絶対、外ではドロップと話さない。私はそう心に誓った。

  

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