第3話

「虹凪ね、お姉ちゃんみたいになりたいんだって」

 これは、お母さんの口癖だ。ちなみに、続きはこうだ。

「お姉ちゃんみたいに明るくて元気でキラキラした人になりたいんだって」

「放送当番だって、雨音が小学校の頃頑張っていた係りだもんね」

「本当に、雨音は虹凪の憧れなんだね」

 お母さんはそう言い終え、私を見てはっとした顔をする。

「ごめんね。また同じこと言っちゃたね」

 私は頷いた。

「雨音は今、図書委員だもんね。アニメしか見てなかったのに、本が好きになるとは思わなかった」

 お母さんは笑いながら言う。

 あのね、お母さん。いつまで昔の話をしているの?

 私、もう小学生じゃないんだよ。中学二年生になったの。

 それに、今の私には憧れられるものなんてないよ。

 これらの言葉を飲み込み、笑い返す。

「ごちそうさま」

「はい。おそまつさま」

 歯磨きをした後、黄色いリュックを背負い玄関へ行く。玄関付近にあるスタンドミラーに映ったのは、キラキラなどとは程遠い、小柄で地味な女子中学生の姿だった。

  

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