第17話 悠馬の正体⁈
養父母と家に帰る道すがら、養父母とゆうみは話し合っていた。
「あのね。ピストルの音がしてお父様が、おいちゃんに馬に乗せられ居なくなったの。そして…おいちゃんが家に入ってきた。お父様の居場所がなくなるじゃない。だから……おいちゃん嫌い!」
ゆうみは6歳だが、おいちゃんに拒否反応を起こしている。子供ながらにおいちゃんに対して感じる不吉な……何か……悪い知らせのような……虫の知らせを感じていた。
ゆうみが感じていたその思いは形となって表れた。そうなのだ。橋の上から落としたことでハッキリと形になって表れた。
「ゆうみ話がバラバラで何にも分からないわよ?」
「ともかくおいちゃんは大嫌い!」
「今度お母様とお話して……どうするか決めましょう」
「うん」
「どういう事だい?まさか……おいちゃんがお父様をピストルで撃ったって事?そして…お母様が離婚しておいちゃんと結婚したって事かい?」
「見てないので分からないけど……血が落ちてた。そして…お父様が居なくなって1年くらいで、おいちゃんが家に上がり込んで来たの。ともかくあたいを橋の上から落としたよ」
「とんでもないおいちゃんだね。早速明日お母様に話しましょう」
「うん」
そんなことを話し合っているとそこにあの利信が現れた。
「あらーどうしたのですか?」
「おいちゃんあの時馬でお父様をどこに連れて行ったの?言って!言ってよ!💢💢💢」
「何を言ってるんだい。ピストルの流れ弾に当たったので俺が救出してやっただけさ」
明治初期は激動の時代で警察の体制がまだ不十分だった為、事件が多発していたことは確かだ。
「お母さんが心配しているから家に帰ろう」
「お母様帰ってきた?」
「そうさ。帰って来たので慌てて迎えに来たんじゃないか」
「おじちゃんおばちゃん……じゃー私お家に帰る。また会いに行きます」
そう言って養父母とゆうみは別れた。
この後養父母とゆうみは想像もできない思わぬ展開を迎える。
🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃
「悠馬恨むぞえー😈悠馬恨むぞえー😈憎い!💢💢💢憎い!💢💢💢憎い!💢💢💢恐ろしい男!💢💢💢」
嗚呼……俺はどうなってしまったのか?
家族惨殺事件の被害者なのに、幻覚が現れ……地縛霊となった家族に夜な夜な会えると言う何とも器用な体になった。
更には祖父母の怪しい行動には目を見張るものがある。
今仲良く話していたかと思うと、そこにはもう祖父母の姿はない。俺は幽霊となってしまったのだろうか?
俺があの世に行ったから、この様な不可解な現象が現れるのだろうか?
そして……喧嘩別れした優衣と結婚していたなど……どうしてこんな事になるのだろう?
「ハッ!何なんだ???」
どうも……タイムリープして時を飛び超えてしまったみたいだ。
「あなた……心配したのよ。やっと目が覚めた?」
「俺はどうなったんだ。俺は高校生だったじゃないか?おじいちゃんとおばあちゃんに病院に無理矢理連れて行かれ……」
「ふっふっふっ!でも……良かったわ」
「お前は……お前は……誰だ!」
「何を言っているの?優衣……優衣よ……」
「お前は……お前は……彼氏が何人もいる女で、俺を苦しめた女?」
「あなた……その話、翔太君が言った話でしょう。何言っているの。あの時その話は間違いで、あなたととことん話し合ったじゃないの。忘れた?」
「アアアアアアアア……???嗚呼……???ああああああああああ??????俺はどうなってしまったんだ?俺は確か……慶応の学生だったのに……」
それにしても岡崎市に帰省してからと言うもの、怒涛の如く不吉な事件が繰り返されている。悠馬と祖父母が「鳥川ホタルの里 」に偶然にも居合わせた場所で田村陽子さん殺害事件が起こった事といい、小5男児の生首が愛知県岡崎市✕✕町の空民家の庭で発見された事といい、偶然が重なり過ぎだ。
更には不思議な現象が起こっていた。一家惨殺事件以来悠馬は祖父母にかねがね疑念を感じていることがある。それはどういうことかと言うと、考えすぎかもしれないが、それこそ……透明人間のように時々姿がスーッと消えることがあるのだ。それと……以前は大らかでにこやかな七福人のような祖父母だったのに、顔つきが怒りに燃える到底同じ人間には思えないのだ。
だから…両親と妹美咲は残念ながら亡くなってしまったのだが、祖父母にも何かが起こっていることは確かだ。
「悠馬まだ分からないのか、実は……実は……お前が……お前が……家族全員を殺害したんじゃないか!💢💢💢あの夜の事は恐ろしくて今でも思い出すのも忍びない」
「おじいちゃん何言っているんだよ。バカなこと言うんじゃないよ。本当に怒るよ!💢💢💢」
一体悠馬に何が起こったのだろうか?
やはり……悠馬は家族が言うように恐ろしい殺人鬼なのだろうか?
実は…悠馬は、地縛霊となってこの世に現れる両親と妹美咲に、夜な夜な会っていた。
「お父さん、お母さん、美咲、会えてうれしいよ」
「本当にやっと会えたわね。お母さんは地縛霊となってでも可愛い息子悠馬に会えて幸せ!」
「だけど……犯人が許せない。よくも俺たちを殺害してくれたなあ!💢💢💢その犯人は悠馬お前だ!何故あんな残酷なことが出来たんだ。許せない!恨めしや💢💢💢……」
「あなた……折角会えた可愛い息子に……もう終わった事よ。蒸し返さないで!💢💢💢あの時は寝込みを襲われ気がついたらあの世に来ていたわ。それも……どういう訳か地獄に落とされてしまった。あんな恐ろしい場所に1分1秒たりとも居たくないわ。どうして私たちが地獄に落とされなければいけなかったの?」
「私はまだ高校2年生だったのに殺され夢も希望も無いわ。あんな地獄に落ちるなんて考えられない。でも3人一緒の衆合地獄(しゅごうじごく)に落ちれたのでまだ良かったけど……この地獄は、子どもをいじめた者や、浮気をした者が落ちるらしい。確かに私はよく弱い者いじめをしていたわ」
「お父さんは弁護士秘書に手を出して、その女と結婚をエサに関係を持ったので仕方ないわ」
「そんなもう終わったことを蒸し返すなよ。新しい彼氏が出来たらあっさりこんな中年のおじさんなんか捨てられたよ。それでもお前は何で衆合地獄に落ちたんだ?」
「実は…私も子どもの頃気に入らない子を虐めていたのよ」
🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃
実は…岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上から田村陽子さん75歳が、何者かによって橋の欄干から下に突き落とされた事件があったが、驚くことに田村陽子さんの遺体には体を切り裂かれた痕がクッキリと残っていた。この犯行は只の殺人事件に留まらない。遺体を切り裂き内臓を見ようとした形跡があった。要するは人間の体の中を見たくて快楽殺人を行なった可能性が浮上して来たのだ。
犯人Aの犯行で間違いないとは思うが、犯人Aの正体が全く見えて来ない。
それも「鳥川ホタルの里 」を訪れた見物客をあざ笑うかのような、「俺の正体を明かして見ろ!」と言わんばかりの大胆不敵な行為。
だが、恐ろしい事に3人大樹と悠馬と翔太はつるむことになったが、何と言う恐ろしい話だ。そこには40歳ぐらいの中年の男もいたというのだ。その40歳くらいの男だったら犯人Aと同じ年頃と言う事になる。
体を切り裂き縫い付け、橋の下に突き落とすとは、目出し帽の男の異常性が伺える。埋蔵金と快楽殺人両方楽しめるという事なのか?
また悠馬には度々幻覚が現れ今日は目の前に不気味な目つきをした16歳くらいの少年が浮かび上がってくる。すると不敵な笑みを浮かべてブツブツ独り言。
「ネズミに蛇、更には猫の解体を行ったが、もっともっと大きいもの……例えば人間の体の中が見てみたい。可哀そうだが、どうにも出来ない。欲望の歯止めが利かない。クックック!何よりも血を見ると興奮してゾクゾクする。ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する。もっともっと……」
この少年は独り言を言った後、いつも悠馬に手招きして言う。
「一緒にやろうよ。ふっふっふっふ」
「ヤヤッ止めてくれ――――――――――――ッ!」
「俺の家の山林に埋めれば証拠は残らないさ。さあ一緒に……さあ一緒に……」
「まさか……人を殺害して解体して……そして…山林に埋めるって事?」
「解体は飽きた。だから…今度は生き埋めにするのさ。恐怖で逃げ惑う人間を追いかけて……追いかけて……そして…捕まえて掘った穴に埋めるんだよ。土を被せて……それでも…元気だと逃げてしまうから……動けないように足を縛り付けるか?頭を叩きつけるかして脳震盪を起こさせて……気を失うだろう。そこに土を被せて、気がついて命乞いをするその表情が、うっふっふっふ……たまらないのさ。嗚呼……興奮する。死に逝く恍惚の表情が見たいのさ……ふっふっふ」
「お前は……お前は……誰だ?お前は……お前は……誰だ?」
(ハッ!と現実に戻る悠馬。俺は一体何を見ているんだ?最近頻繫に表れるこの幻覚の正体は何なのだろうか?)
悠馬は12歳の頃自殺サイトに応募して犯人Aから子供時代の話を聞いていた。そうなのだ。犯人Aの過去の話だった。その話が前述に記した16歳の少年の話だ。
聞いた時は子供過ぎて聞き流していたが、あの頃から馬が合うと言うのか、悠馬だけは殺害せず優しくさとし帰してくれた。
この様な経緯で悠馬と犯人Aは知り合いになった。
サイコパスとは本当に恐ろしい血も涙もない人間の皮を被った悪魔だ。
サイコパスの最大の特徴は、やはり「良心の欠如」。 サイコパスには他人の痛みに対する共感が全く無く、自己中心的な行動をして相手を苦しめても快楽こそ感じさえすれ、罪悪感など微塵も感じないのがサイコパスの特徴だ。
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