第12話 犯人Aは誰?


 江戸時代後期から明治時代初期の日本の変革期に生きた利信と夕花と美智子だったが、3人は無念の死を遂げていた。

 利信によって生き埋めにされた夕花の祟りなのだろうか、そう言えば倉庫の穴倉に夕花の元夫英明も眠っていた。この利信とは口で言い表せないほど卑劣で恐ろしい男だ。


 英明と夕花の怨霊が「日光繊維」と邸宅をあの日の落雷で集中攻撃して、利信と美智子の命を奪ったのであろう。


 怨霊は天災を巻き起こすと言われている。日本には昔から恨みを残して亡くなった人は恨みの対象を祟ったり、天変地異などの禍を引き起こす怨霊になると信じられてきた。


 不幸な出来事ではあったが、利信と夕花の間に誕生した信幸は両親を相次いで亡くしていたが、祖父母に可愛がられてすくすくと成長した。記憶の奥底にあの日の事はぼんやりとではあるが、今も脳裏に刻まれている。


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 3歳の信幸は今までは、青い空と雨降りのどんよりした空しか知らなかった。

 

 それが……あの日だけは違っていた。誕生してまだ経験したことのないカラフルな空の色に魅入られてしまった信幸だったが、コロコロ暗闇や赤や紫や真っ白な色が激しい爆音と共に空に代わる代わる現れ、ピカリと光ったかと思うと蜘蛛の糸を張り巡らせたような黄色い光に、ウキウキワクワク一気に外に出た。


 そして…外をよちよち歩いていると「日光繊維」の社員が馬車で通りかかり祖父母の家に送り届け事無きを得た。


「大奥様お坊ちゃまをお連れしました」


「ゥウウウッ( ノД`)シクシク…おーこの子だけでも……子だけでも(´;ω;`)ウッ…助かってくれて…ゥウウウッシクシク…」

「大奥様お気をしっかりと……」



 後で分かった事だが、実は…利信には妻美智子が居ながら、何という事だ。春子という秘書と付き合っていたことが分かった。更には酷い話だ。利信と春子の間には娘の華子が誕生していた。春子は利信が亡くなったので早速「日光繊維」社長代行におさまり会社を切り盛りしている。


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 田村陽子さん75歳が、何者かによって橋の上から下に突き落とされた午後9時過ぎに岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上を彼氏と蛍見物に来ていた正義感溢れる女子高生は、どうも…利信の子孫だというのだが、実は…不思議な現象が起こっていた。


 利信の子孫だという女子高生北野友里花は、実は…利信と夕花の息子信幸の子孫Ⅹを必死になって追っている。と言うか?天の声に呼び起されて体が無意識に信幸の子孫を求めるのだった。


 不思議な話だ。友里花には叫び声が時々聞こえて「信幸の子孫Ⅹを探してくれ!」と痛切に祈りにも似た声で叫ぶ誰かの声が聞こえるのだ。


 この少女友里花は利信の子孫だと言われているが、どうも……利信と秘書春子の間にできた娘華子の子孫に当たるのではなかろうか?


 そうすると辻褄が合う。それはそうだろう。不幸続きの日光家だが、わずか数年の間に両親と義母3人を失った信幸と、父を亡くした華子は兄妹でありながら一度も顔を合わせた事はないが、親を幼少期に亡くしているのできっと兄妹だから…何としても会いたいだろう。


 その強い気持ちが、兄妹の子孫を引き合わせようとしているのは分かる気がする。友里花はきっと天の声に呼び起されて、体が無意識に信幸の子孫Ⅹを求めているのだろう。


「夕花の息子信幸の子孫Ⅹを探してくれ!」と言うお告げがあるという事は、多分友里花は利信と秘書春子の子孫なのだろう。


 梅雨の合間の6月下旬に祖父母と悠馬で蒲郡(がまごおり)のあじさいの里 に一緒に出掛けたが、その後岡崎市の「鳥川ホタルの里 」を、見にやって来た午後9時過ぎに岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上で田村陽子さん75歳が、何者かによって橋の上から下に突き落とされる事件が起きたが、あの時北野友里花は、偶然にも犯人の目出し帽の男に遭遇している。


 霊感の強い友里花はまるで夢遊病者のように体が自然に吸い寄せられて「鳥川ホタルの里 」に向かっていた。


 「夕花の息子信幸の子孫Ⅹが『鳥川ホタルの里』 付近の橋の上にいる」そのお告げにしたがって午後9時過ぎに岡崎市の「鳥川ホタルの里 」付近の橋の上にやって来た友里花だったが、そこには2人の男女が、一方は高齢女性を突き落とそうとしている目出し帽の男で、もう一方の高齢女性の方は被害者の田村陽子さんだった。


 だからあの夜友里花はどっちが、信幸の子孫Ⅹか分からないので必死で助けようとした。


 という事は、2人の内のどちらかということになる。信幸の子孫Ⅹはあの犯人目出し帽の男なのだろうか?それとも……田村陽子さんということも十分考えられる。


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 それでは……サイコパス犯人Aは一体何者なのか?そこを集中的に調べなくては手がかりは見えて来ない。


 田村陽子さん体切り裂き殺害犯と小5男児の空民家生首置き去り事件は、同一犯の可能性が濃厚になって来た。


 どうしてかと言うと友里花が両方の事件の第一発見者だからだ。


 益々分からない。どういう事?


 天の声に呼び起されて体が無意識に信幸の子孫Ⅹを求めるのだが、あの日も「夕花の息子信幸の子孫Ⅹを探してくれ!」と言うお告げがあり、その場所に吸い寄せられるように岡崎市の空民家の庭先に出向いたのだが、第一発見者は、何と友里花だった。という事は、やはり目出し帽の男が信幸の子孫Ⅹという事が濃厚だ。


 それでも…まだ田村陽子さんが、信幸の子孫Ⅹという事も捨てきれない。目出し帽の男に標的にされる何か、田村陽子さんにも空恐ろしい秘密が隠されているに違いない。



 そして…何と言う事だ。悠馬にも恐ろしい幻覚が現れ出していた。


 目の前に不気味な目つきをした16歳くらいの少年が浮かび上がってくる。すると不敵な笑みを浮かべてブツブツ独り言。


「ネズミに蛇、更には猫の解体を行ったが、もっともっと大きいもの……例えば人間の体の中が見てみたい。可哀そうだが、どうにも出来ない。欲望の歯止めが利かない。クックック!何よりも血を見ると興奮してゾクゾクする。ふっふっふっ!はっはっはっは!ああああああああ!興奮する。もっともっと……」


 この少年は独り言を言った後、いつも悠馬に手招きして言う。


「一緒にやろうよ。ふっふっふっふ」


「ヤヤッ止めてくれ――――――――――――ッ!」


「俺の家の山林に埋めれば証拠は残らないさ。さあ一緒に……さあ一緒に……」


「まさか……人を殺害して解体して……そして…山林に埋めるって事?」


「解体は飽きた。だから…今度は生き埋めにするのさ。恐怖で逃げ惑う人間を追いかけて……追いかけて……そして…捕まえて掘った穴に埋めるんだよ。土を被せて……それでも…元気だと逃げてしまうから……動けないように足を縛り付けるか?頭を叩きつけるかして脳震盪を起こさせて……気を失うだろう。そこに土を被せて、気がついて命乞いをするその表情が、うっふっふっふ……たまらないのさ。嗚呼……興奮する。死に逝く恍惚の表情が見たいのさ……ふっふっふ」


「お前は……お前は……誰だ?お前は……お前は……誰だ?」


(ハッ!と現実に戻る悠馬。俺は一体何を見ているんだ?最近頻繫に表れるこの幻覚の正体は何なのだろうか?)


 それから……どういう訳か、恐ろしい落雷を見ることがある。


 それこそ……家の中にいると、異常なまでにカラフルな色と音が荒れ狂い、不気味にピカピカゴロゴロ光ったり音を立てたりして、どこか分からない…それこそ自分の身近に迫り来るかもしれない危機感で押しつぶされそうになりながら、外に逃げることも出来ない。そんな不安な気持ちを表現するなら、夕暮れの空一面に故障した電飾イルミネーションが、赤や紫、黄色に青に白と爆発して「ピカピカゴロゴロ」目も開けていられないほどの閃光の激しさが、迫ってくるさまを連想して恐怖で押しつぶされそうなのだ。


 どういう事かと言うと、空は荒れ狂い紫になったかと思うと落雷の光で空は一瞬真っ白になるが、直ぐに真っ暗闇になり、それでも…ころころ天候は変動して、一瞬夕日でオレンジに染まったかと思うと、容赦なく雨と落雷に変えてしまうのだが、蜘蛛の糸のよう張り巡らされた黄色く光る落雷は、それこそ蛇行線を描きながら凄まじい勢いで落ちていく。真っ暗だった空はピカピカゴロゴロ音を立てながら、ピカリと光った瞬間空を一瞬で真っ白に変えてしまう。


 現実の空模様はこのような様子なのだが、恐ろしくて外に出れない。これは利信の妻美智子が落雷で亡くなった日の現象そのままだ。

 

 どういう事?夕花が怨霊となって悠馬に憑いたのだろうか?

 そこには一体どんな真実が隠されているのか?


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 一体どういうこと?





















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