第13話 3人の学生



 山々コンビは「女子高生が昨日の午後9時過ぎに岡崎市の『鳥川ホタルの里 』付近の橋の上から田村陽子さん75歳を降下に突き落とした」と言う証言を聞き女子高生北野友里花を訪ねた。


「どうして、田村陽子さんを橋から突き落とすような卑劣な真似をしたんだい?」


「それは……それは……違います。あの時、実は…犯人がしゃがんでいて暗かったからハッキリと分からなかっただけです。誰かがしゃがんで足を持って下に真っ逆さまに突き落とそうとしたので、私が慌てて引き留めに入ったのです。そしておばあちゃんの体を懸命に支えようとしたが、一歩間に合わず止め来ることが出来なくて、真っ逆さまに下に落ちてしまったのです」


「その犯人の特徴を教えてくれたまえ!」


「それが…目出し帽だったので全く分かりません。まるで……忍者のような素早い身のこなしで、ましてや夜なのでしゃがみこんでいたので全く分かりません」


 そこで警察も、昨日の夜9時過ぎの現地の状況を事細かに述べていた証言者の元に向かい、もう一度聞き取りを行った。


「昨日の夜の状況だが、高校生の女子が言うには落としたのではなく、慌てて近付き落ちないように咄嗟に捕まえたのだと言うのですがね?」


「ああああああああ!確かにそのようにも見受けられました。押さえた瞬間に下に落ちて行きましたね」


 そこで…山々コンビは、病院で母田村陽子さんに付きっ切りの看病中の息子を当たった。


「田村陽子さんの息子さんですね。少しでも早く憎き犯人を捕まえるためにはスピードが肝心です。お話をお聞かせください。お母さんは誰かに恨まれるような事はありましたか?」


「……実は…母はアパートを経営していまして……それで…滞納者には厳しい母でした」

「結局アパートの家賃滞納が原因だったのだろうか?それでは……滞納している人物教えて下さい」


「ああ!柳田辰夫さんです」

 こうして…山々コンビはタムラハイツに向かった。


 ”トントン“ ”トントン“ ”トントン”

 ”トントン“ ”トントン“ ”トントン”

 ”トントン“ ”トントン“ ”トントン”

 どれだけ戸を叩いても応答がなかったので改めて出直すことを誓った2人だった。柳田辰夫はタムラハイツから姿を消した。その足取りを追う山々コンビ。


 だが、懸命の捜索もむなしく足取りが全く掴めない。柳田辰夫はどこに消えたのだろうか?


 この柳田辰夫こそ犯人Aなのだろうか?


 山々コンビは必死になりこの柳田辰夫を追っている。そして…やっとのことで柳田辰夫を探し出すことが出来た。


 柳田は友達の連帯保証人になり大借金を抱えてしまった。それでもこんな借金まみれの男がよくもアパートを借りることが出来たものだ。


 実は…タムラハイツ202号室は以前自殺者が出た事故物件だった。その代わりとして保証人も要らないと言う条件付きの物件だった。その為に家賃は破格の安さだった。


 お金に困った柳田はこの条件だったので、このアパートに転がり込んだのだったが、金が払えずトンズラした。


 そして…隠れるように、かつては釜ヶ崎とよばれ、いまは、あいりん地区とよばれるドヤ街が大阪・西成にある。その街で、日雇労働者として隠れるようにして生活していた。


「やっと見つけました。何故田村陽子さんが悲惨な事件に巻き込まれた矢先に姿を消したのですか?」


「……えっへっヘッヘッヘ……それが……毎日毎日矢の催促でして……それで……ヘッヘッヘ」


「あの夜田村陽子さんが殺害された日、君は午後9時過ぎに岡崎市の『鳥川ホタルの里 』付近の橋の上にいたんじゃないのかい?」


「いえいえ……滅相もありません。僕は……田村さんを殺害するほど恨んではいません。たまには手料理を差し入れしてくれる優しいところもありました。ですが……家賃を3カ月も滞納しまして……えっへっヘッヘ……それで…矢の催促に逃げ出した始末で…」


「じゃー滞納は認めるが、それほど劣悪な関係ではなかったという事だね?じゃ―田村さんに何か変わった変化はなかったかい?」


「嗚呼……確か……一度田村さんの自宅に滞納分のお金を払いに行った日に、若い学生さんを見かけました。田村さんは物凄く幸せそうでした」


「それはお孫さんだったのではありませんか?」


「いやーお孫さんではないですね。子供は息子さん1人きりで、息子さんは結婚していません」


「若い学生風の男はどんな感じの男性でしたか?」


「ハッキリは見えなかったのですが。ともかく田村さんはニコニコして……憧れってやつですかね。とても幸せそうでした」


「そんなバカな……60歳近く離れた男性にそのような事は無いと思いますよ」


 基本的に、毎月の家賃支払いは月末が期日になっている。 細かく言えば、25日が給料日に定められている会社が多いため、26日や27日が支払日になっていることが多い。



 柳田は余りにも口やかましく家賃の支払いを要狂されたので、丁度梅雨の合間の6月下旬に、田村陽子さんが誰かに誘われ出掛けたので、これ幸いに柳田は失踪した。


 田村さんは嬉しそうにいそいそと出掛けたというのだが、ひょっとして若い学生風の男に誘われ出掛けた命を落としたのだろうか?


 と、言う事は目出し帽の男は、柳田が見た若い学生風の男だという事も考えられる。


 そこで…早速息子にも聞いて見ることにした山々コンビだった。早速息子田村の自宅に向かった。


「実は…失踪していた柳田と言う男が、田村陽子さんが生前若い学生風の男と一緒に居るところを見たというのですがね。何か……その男とお母さんのことで分かった事があったら教えて頂けませんか?」


「嗚呼……その学生は以前アパートに住んでいた学生です」


「何ていう名前ですか?」


「𠮷原大樹と言う学生です。そこには後2人の高校生が来ていまして……確か……大沢翔太と言う名前の高校生でした」


「あと1人の名前は分かりませんか?」


「嗚呼……喉まで出かかっているのですが?めっちゃくちゃイケメンでした」


 🌃✨ ✨ ✨ ✨ ✨🌃


 それでは…何故大樹のアパートに悠馬の大親友翔太が来ていたのか?


 実は…この3人は吸い寄せられるように、このタムラハイツにやって来ていたという事は、やはり田村陽子さんが、あの恐ろしい男利信と夕花の子孫Ⅹという事で、大樹と翔太それにあと一人は、過去の埋蔵金メンバー子孫で吸い寄せられるようにこのアパートに集まって来るのだろうか?


 そして…めっちゃくちゃイケメンというのはひょっとして、悠馬と言う事も十分考えられられる。




 体を切り裂き縫い付け、橋の下に突き落とすとは、目出し帽の男の異常性が伺える。


 快楽殺人(かいらくさつじん)とは、殺人自体が快楽で、最初は小動物、例えば猫などを殺すことに刺激を受け、そんな自分に苦悩しつつも一方で猫を殺すだけでは満足できなくなって次には解体を始め、やがては人間の殺人へと移行して、快楽を得る目的で殺人を行うが、それでも…殺人だけでは物足りなくなって、殺人と遺体損壊を行う場合がある。


 3人の内の誰かが犯人Aで友達の異常性に気づき、田村陽子さんをターゲットにしていることを知って、大切な友達を犯罪者にしたくない一心で、集まっていた可能性も十分に考えられる。





 


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