超未来逃避行


 電波も届かない遠い世界へ二人で行こう。


 誰の目も監視の手も届かない遠い世界。


 電気もなければ火をつける道具もない。


 でも、それで良いんだ。


 だってこんなにもまぶしい夜空が、どこまでも頭上に広がっているんだから。


 星が燃えるようにかがやいている。


 満月が大きく覆いかぶさっている。


 水平線も地平線も曖昧に溶けていく丘で、僕は君に伝えよう。


 愛を。


 感謝を。


 照れ隠しに憎まれ口も挟んだりして。


 陽が昇るまでの長く短い夜は、僕たちに透明の翼を授ける。


 朝日から逃げるように、僕らは飛び立とう。


 次の夜へ。


 月が還る場所へ。


 居場所がなかった僕に、生きる意味を与えてくれた君と、僕は手をつないで羽ばたこう。


 凍り付いた太陽から逃げる僕たちは、どこまでも光の楽園を探す旅を続ける。

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