それは詩あるいは掌編

三十三さとみ

お花という女


華のお江戸で生きるあたしは、癪な〈お花〉と名付けられた。


〈花〉のようにイイ女という意味だが、あたしはそんな優雅なもんじゃない。


嵐に吹かれた〈桜〉のように、荒々しく舞う娘でいたいんだ。


〈牡丹〉のように崩れる幸せなら、そんな幸せは欲しくはないね。


〈椿〉のようにあでやかでも、落ちゆくぐらいなら美しくなくていい。


夏を彩る〈朝顔〉になっても、力なくしぼむ姿は親兄弟でも絶対に見せないよ。


こぼれる〈梅〉の美しさなんてものはないし、〈紫陽花〉の最期のように枯れてまで雨水は欲っさない。


〈萩〉のようにこぼれる涙も〈菊〉を浮かべた盃に隠して舞えば、そりゃすこしは浮かばれるのかもしれないが。


とにかくあたしはその辺の〈花〉と違うんだ。


あんた、もしもあたしを「お花」と呼びたいなら、そこんところは覚悟してほしいもんだね。


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