21.おれがサードであいつもおれで

【4月20日6時??分】


 目が合った。二人はお互いに顔を見合わせた後、女子がこっちに来る。

 そいつは言った。


「あなたは“いつ”のショースケ?」


 思考が追いつかなかった。どう返せばいいか戸惑っていると、男の方が言った

「何固まってんの?」

 今も詰まりはしたが、反射的に口が開いて、呼びかけようとしてた。 

 笑いながら一緒に菓子食ってる映像がある。なのに、大事な部分だけは削られてる。

「ショースケ、今日はこっちから来たの? またご飯食べてく?」 

 ショートカットの頭を揺らして、女子が言う。

 確かに一緒に食べている絵がおれの中にある。いつのだ?


「レイ、ショースケって呼ぶとややこしい」

 男が言う。

「でも、こっちもショースケだよ?」

 こっち”も“? そういえば、さっきこう言ってたな。


——“いつの”ショースケ?


 ショースケって……確かイタバシの名前だ。こいつら、ショースケのことを知ってる? 

 さっき一瞬見たスマホの日時は四月——イタバシじゃないおれがいるかも知れない時間。


「お前ら、おれのこと知ってんの?」

 今度は男の方が当たり前のように言う。

三番目サードじゃないの?」

「……三番目サード? おれが?」

「自分で言ったくせに」

 言ってないし一度も呼ばれてない。サードって、野球か。

 番号なのも落ち着かない。本物、イタバシと来ておれが三番目。……間違っちゃいないのか。

 

「“こっちの“ショースケは部屋に置いてきたし」

 レイと呼ばれた方が不思議そうに首を傾げる。……この首の角度も見慣れている感じがするんだけどな。

「その制服。彼は学校行ってないから、三番目サードだってすぐわかるよ」 

 三番目サードと呼ばれるのも引っかかる。正直に話すのが良さそうだ。


「悪い、お前らが誰だかわからない。というか……おれが誰かも怪しい」

 正直、何の冗談かと自分に突っ込みたい。でも事実。

「”こっちの“ショースケに会いたいんだ」

  

 何かがおかしいことに気づいてレイが目を瞬かせる。それから男が言った。

「レイと同じこと言うけど、キミ……“いつ”から来たの?」


 ……六月と答えたら、さらに二人の顔を曇らせるだけだよな。


  ◇◇◇


 二人は、タクトとレイ。

 名前を聞いてもピンと来なくて、いたたまれなくなった。

 どうでもいい奴なら端っから名前なんて覚えない。でもコイツらは、どうでもいいわけがない。


 タクトから聞いた話はこうだ。

 ショースケと同じ顔——三番目サードが初めてコイツらの所にやって来たのは今年の一月。

 突然“部屋の中に落ちて来た“らしい。 

 本物は部屋でずっと眠っていて、別の時間軸から来たショースケなのだとわかったそうだ。

 別の時間軸と平然と話す二人。元々、どんな関係だったんだろう。

「最中食べて帰ったよ?」

 ……何をしに行ったんだ、三番目サード


 その日から度々”落ちて“来ては布団を占領、飯を食って去っていくらしい。

 他にもいるのか? ……別のおれが。


 ◇◇◇


 レイたちに案内された自宅。

 映像で何度も見た部屋の片隅に、そいつはいた。 

 イタバシの空気とは違い、辺りが少しピリついている。

 前髪に隠れた探るような目。……本当におれなのか? 

 何か言わなきゃ。

 その時、突然、妙な言葉が口をついて出て、気づいたらスマホを手に持っていた

「頼む! これ、充電させてくんねぇ? マジ困ってんだよ!」

 !? ……またあいつだよ。勝手に口から出るの、何とかならないのか。

 伝え方はともかくとして、イタバシのスマホ、そうか。写真を見せれば話が通じるか。

 空気が軽くなると、そいつは少しだけ表情を和らげた。

「あれ? ……僕のと同じ?」

 ポケットから全く同じ端末が出てきた。


 それより……なんだ今の違和感。

 同じ声でも、テンポや息の出し方がおれとどこか違う。

 それに。


 ——”僕“?


___________


読むのに時間を使ってくれてありがとうございます。

主人公と一緒に困惑、一体何人いるんだよと思った方、ぜひ感想や星で声をお聞かせください

貴方の声で、ストーリーが変わることもあるかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る