第2話:神力の秘密
「はああああああッ!」
中央大陸の西端に着いた俺は、何も無い平原であるその場所で、闇の力を解放し撒き散らしていた。
やがて、視界の何もかもが灰色に変色していく。女神の光の力が、悪魔の闇の力に敗北し、この場所を支えるエネルギーが塗り替えられていっているのだ。
暫くして、完全な闇の領域がその場にできあがった。
「次は城だ」
ゆくゆくは、神力を奪うために各国の姫を攫ってくるつもりだ。
それなりの大きさのものが必要だろう。
「フォールハイト」
俺の魔力が増幅され、想定よりも巨大な城が出来上がってしまった。
「まあいい。ほら、来い」
逃げないように縛って隅へ転がしておいた2人の女を、魔法を使って引き寄せる。
「ほ、本当に闇の領域が……ということは、カイは完全に、魔王……」
「お父様でさえ、今の魔王城を作るのに何度も改装を重ねたと言っていたのに……」
魔王城で捕まえた少女は、推測通り魔王の娘だった。
名前はテストラ。
「早速、サーナの内側の神力を取り出すぞ」
俺は2人を引っ張って、城内部の寝室へ転移した。
「神力を取り出すなんて……私本人でも扱えないのよ」
「それは手探りだな。だが、恐らく、ギアーの力があれば……」
ウートは身体機能の超強化。
フォールハイトは魔力の超強化。
そしてギアーは、あらゆるものを奪い己のものとしてしまう力だ。
力を使いながら、鎖で繋がれたサーナの胸に手を当てる。
「ほう」
「成功していないようですね」
「そうだな。干渉すらできない。何か、神力と接続するためのものが必要だ」
そうだ、確かオルワンズ王国の国宝として、神剣アザムというものがあったな。
「引き返して、神剣アザムを奪いに行くか」
「なっ、それは我が国が何百年と受け継いできた、国の滅亡の危機にのみ使うことを許された国宝よ! 貴方の触れていいものではない!」
「それなら止めてみればいい」
早速行こう。
と、その前に。
「お前に働いてもらおうか、テストラ」
「ッ……私が素直に体を許すとでも思っているのか?」
「アロガンツ」
これは、悪魔の力の1つ、支配の能力だ。
「準備をしろ」
「あっ、体が勝手に……!」
テストラは下半身に纏っている衣服を自ら全て脱ぎ捨てると、こちらに尻を向けて、自分でいじり始めた。
「くそっ、体を止めろ!」
「いい眺めだぞ」
魔物の大群を全滅させた時にも動かなかった感情が、喜悦を覚えている。
やがて、無音だった部屋の中に水の音が響き始める。
「仇の前でそんなことをさせられておいて、濡らしてるのか?」
「違う、これは、せ、生理現象だ! 私の感情や環境とは別の次元のことなんだ!」
「そうか。じゃあそんな言い訳が効かないようにしてやる。ベッドへ上がれ」
「くっ」
四つん這いでベッドの上に来たテストラが顔を真っ赤にしながら仰向けになり、下半身に何も纏わないまま、両腕に膝を抱え込んだ。
「暇な時間が出来たら、ちゃんと可愛がってやる」
俺も自分のものを取り出し、テストラのそこへ当てた。
「お、おい、私は初めてなんだぞ……そんなものが」
「言ったろう、いつか可愛がってやると。今のお前は、ただの道具だ」
テストラの淫壺へ、俺のものを突き入れた。
「ああああああああああッ!」
◆◆◆
「元勇者が攻めてきたぞーっ!」
オルワンズ王国は、俺の襲来に気付いて大わらわだった。
俺の目的は神剣アザムのみ。
神力は、女の、最も若い王族のみがその本体を保持しているようだ。何しろ女神の力だからな。
それがサーナ。つまり、神力のために王族を助ける必要はない。
「ギアー」
強奪の力を発動するも、神剣は転移してこない。
やはり、神力には俺の悪魔の力がほとんど及ばないと考えてよさそうだ。
では、物理的に奪っていくほかない。
手の先に暗黒球を生成する。それを町の中心へ落とした。
「いやあー!」
「誰かー!」
「助けて、助けてくれーっ!」
ついこないだまで俺を慕い持て囃した民が悲鳴を上げていようと、俺の心は少しも動かない。
その時、光の斬撃が飛び、暗黒球を左右に切り捨てた。
「堕ちた勇者カイ! 貴様は我が討ち滅ぼす!」
現れたのは、サーナの兄、ブレール・アイン・オルワンズ。
かつては共に剣の修練などもした仲だったが、今は友情なんて感じない。
「その剣は……」
「見るのは初めてだろう。これは神剣アザム。国が滅亡の危機に瀕した時にのみ使用が許可される国宝だ」
「ありがたい。俺はそれを求めて戻ってきたんだ」
「そうか。だが残念だったな。貴様の命はここまでだ!」
ブレールが神剣アザムを振るうと、光の力が斬撃となって飛んでくる。俺も、闇の力を刃の形にして迎え撃った。
「そのような片手間の魔法で、神剣アザムの攻撃は止められぬ!」
ブレールがそう言うのと同時に、俺の闇の斬撃が一方的に切り裂かれた。
「くっ、そうか、神力が込められているのか」
闇の力では、神力には敵わない。
神力の斬撃を体を反らして回避する。だが、すぐそばを通りすぎただけで、その熱で悪魔となった俺の体が焼けた。
「だが、その剣の効力が証明されたぞ」
それを使えれば、サーナの中にある神力に干渉できる。
「死ね、ブレール」
俺は小さな闇の針を無数に作り出し、放った。
「くっ」
ブレールは高速で神剣アザムを振るい、自身に直撃する闇針を全て迎撃する。
「その剣は身体能力も上げるのか?」
「その通り。使う者は文字通り一騎当千の力を得る」
「なら……俺も一度も出したことのない本気を見せてやろう──フォールハイト」
魔力が増幅され、魔法の威力が向上する。
闇の光線を放つ。
「ぐぅっ!」
ブレールが剣を振るったのは、肩に直撃を受けた後だった。
「さあ、死ね」
同じように、無数の闇針を生成する。その量も、威力も先程の比にならない。
飛翔する闇針は、ブレールの全身に風穴を空けた。
「あ、か……」
ブレールの死体が地面へ落ちていく。
「触れるだけでも身を焼くか……」
そして俺は、神剣アザムを手に入れた。
「仕上げだ。さあ……滅びろ、オルワンズ王国」
巨大な暗黒球を放つ。
王国が呑み込まれ、暗黒球が消えたあとには、更地のみが残っていた。
光の力が大きく消失した実感。
「心地いい……」
世界を滅ぼせば、これよりもっと素晴らしい悦楽を享受できるという直感がある。
俄然、やる気が湧いてきた。
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