奈緒ちゃんの恋の行方は


明日の映画は十時から。

バス停まで徒歩で

二十分あまり、バスで一時間ほど。

──そこから電車で二十分。

そうなると、八時前には家を出なくちゃ。


千穂は寝坊しないよう、二十時前に布団に潜り込んだ。

──夢はみなかったので、朝も不安になることもなかった。

千穂は自分しか乗客のいないバスに乗り、心地よい揺れに身を任せ、穏やかな気分で窓の外の景色を楽しんだ。

奈緒ちゃんと待ち合わせた最寄駅まで、もうすぐだ。


駅はいつもより人が多い気がする。

──ゴールデンウィークだもんね、みんなお出かけする日。

自分も町まで遊びに行く──千穂の気持ちは次第に浮き立ってきた。


「ちーちゃん!おはよう!」


奈緒ちゃんは可愛いラベンダー色のミニワンピース。

奈緒ちゃんの服はいつも女の子らしくて、恋する乙女にピッタリって感じ。


千穂は背が高く痩せているので、こういう服は着てみたくても似合わない。

なんとなくそういう気がするから、ジーンズにパーカーという中性的なファッションだ。


「ねえ!あのね、私寝ないで考えたんだけど──映画館の席順!木下君、私、ちーちゃん、タカミオでどう!?」


「え?うん、いいと思う……よ?うん、いいんじゃないかな……」


(徹夜で……!?凄いよ奈緒ちゃん!)


「やったぁ!かんがえた甲斐あったぁ!」


奈緒ちゃんは小躍りして、木下君とタカミオの到着を待った。

二人は約束の時間通りに現れ、千穂達は四人で映画館に向かった。

《名探偵ドイル 隻眼の真実》

木下君の見たがっていた映画だ。


だが──奈緒ちゃんの作戦は、既に危機に瀕していた。


「奈緒とちーちゃんが奥に入れよー」


という、木下君の空気の読めなさで──。


「だ、ダメだよっ?木下君が奥で──」


タカミオが奈緒ちゃんを手で制止、遮った。


「──木下。この場合は女の子を守るために、俺らで挟むのが最適だ」


「おお?確かにそうだな!じゃあ──」


タカミオはさっさと千穂を促し、予定とは逆になったが奈緒ちゃんの面目は保たれた。


映画は面白く、普段アニメを見ない千穂もハラハラドキドキで楽しめた。

時々、肘が触れるタカミオへのドキドキもあったけれど。


一緒に出掛けるのは初めてだったけど。

何故かタカミオが隣にいる気配は、どこか懐かしく、不思議な感覚だった。


──でも、この少し不安なソワソワは何?

私は、一体何が気になっているの──?



「待て、木下。俺は男の隣に座るのはヤダ」


ランチで木下君の誘導に、失敗しかけていた奈緒ちゃんを救ったのは──

またしてもタカミオ。


(タカミオ、すっかり奈緒ちゃんの恋の神ね)


千穂は思わずクスクスと笑い出した。

タカミオの誘導で、奈緒ちゃんは希望通りに木下君の隣に座ることが出来た。


ファミレスのランチは、平日だけどゴールデンウィークだから土日料金だった。

田舎の千穂達には痛いプラス150円。

食事自体は楽しく、和気あいあいと時間が過ぎていった。


「ねね、ダブルデートみたいだねっ!?」


ウッキウキの奈緒ちゃんが、はしゃいだ声を上げた。


「バッカ……何言ってんだ奈緒!」


木下君が突っ込みを入れる。


(え、木下君の耳が赤い……効いてる!効いてるよ奈緒ちゃん…………!!)


千穂とタカミオは、この日ちょっと進んだ感じの奈緒ちゃんの恋模様を見守りながら──


仲は良いけれど、お互いの距離をなんとなく探り合うような、ぎこちない雰囲気。

それが、千穂とタカミオの関係だ。


──だけど、一緒にいるのは、楽しい。

もう、離れたくない。



──もう?



一緒に出掛けたのは、今日が初めてなのに?


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