小我乃由依のセクハラは止まらない

俺たちは、探偵である。

さっき加入したパワー系変態先輩小野天狗おのてんぐかがりと、

超頭脳派である正論系幼馴染秀才小祭こまつりかえで

神童であり文系である俺系天才小鹿こじかこいの、

高校生探偵。

篝先輩からいろいろ聞こうとはしたのだが、集中力が切れた、馬鹿な篝先輩はR18な話をずっとしてくる。まぁ、おそらく篝先輩から聞けることはもうないのだろう。

「…小鹿、ジュース買ってきてよ。喉乾いた。」

「私もっ!カロリーゼロのコーラをいただきたい!」

「はっ?待って待て待て、自腹でか?」

「あとでお金返すからさ。ダメ?」

「…」

こういう時、断れないのが俺の悪いところなのだ。俺は俺自身をとして広めているが、喧伝しているが、それは無理を通させないためだ。

断れないから。

断った後を考えるのが怖いから。

…考えることを戻そう。

飲み物を買わないと。近くにコンビニはあっただろうか…まったく、ここら辺の街並みは正直全くわからない。見当もつかない。癒しが欲しい。

今の『小祭楓は止まらない』には癒しが足りないぜ、まったく。

小祭は冷たいし

篝先輩は変態だし

もっとツンデレとかヤンデレとかデレデレとか妹とかお姉さんとか。

俺はどちらかというと年上が好きだ。篝先輩みたいな年上は好きじゃない。

優しくて甘えられるような32歳くらいの年上が好きだ。

「はあ、どこかに32歳くらいの優しくて甘えられる女の人はいないものかな…」

「はーい、いますよ、ここに。」


「…」

「もー、なんでそんな目で私を見るんですか、いや、どこ見てるんですかー鹿。そこにはいませんよー?」

先生が抱き着いてくる。豊満な大人の胸ががっつり当たる。正直言って学校の中いつもはもっと非常識な、非情なことをしてくるため、この程度では俺の視線は明後日の方向から揺るがないぞ先生。

そういえば、明後日は月曜日だ。今週はシャトルランがある。憂鬱だ。あの甲高い音が苦手だ。走るのも対して得意ではないし、そもそも俺は運動が向いてない。百メートル歩いただけで息切れする。

「ほらほら小鹿くん?かわいい先生の、小我乃こがの 由依ゆい先生のプライベート姿ですよー?わりと胸元あけてますよー?」

え?マジですか?

「あっ見た。さすが高校一年生。」

「見てないです。僕が見たのは先生の腹のたぷんたぷんなお肉です。」

「ついてないですよ!!!」

思いっきりぶん殴られた。この人お腹の肉関連の事話すと怖いんだよな。

それにしても、さすがに女性のこぶしでも顔面に直で来るとめっちゃ痛い。

…よく見ると先生めっちゃ際どい格好してるな。腹出して、ホントに胸元出してるし。この人教師なのに、この人もう32なのに、すこしキツイな…。

32点。

でも、先生の100点満点スタイルが強調されててやばいな…。

100点。

「…で、なんですか先生?成人するまでは抱いてあげませんよ。」

「えーほんとー?いいじゃんしようよ未成年淫行!先生にインしちゃおうよー」

ナニをインするんだよ。

…改めて、この変態教師は小我乃こがの 由依ゆい。32歳独身。抜群のスタイルと美貌、意外な天然さなど。モテない理由がない独身だ。

ならなぜ独り身なのか?それは簡単。

真面目なサイコパスだからだ。

全てにおいてどこかズレている。変な人なのだ。今まで彼氏を18人病人送りにしたとか、やっぱり初めては好きな人がいいとか言って、やる気まんまんの男の玉という球をつぶしたとか…恐ろしい。身の毛がよだつ。

俺も気分で殺されそう。

そんなんだから処女なんだよ先生。

「小鹿くん?今めっちゃめちゃ失礼なこと考えてましたよねー。決めつけてましたよね。」

「いや?決めつけてなんかありません。断定していました。」

「…断定と決めつけるって同じ意味じゃないの?」

「えっと…」

「あれですよ。『宇宙人はいる』って言うのが断定で、『宇宙人は絶対いる!間違いない!』っていうのが決めつけることですよ。」

「…ニュアンスの違いがわからないんだけど、つまり?」

「ほとんど同じで、等しいです。水とウォーターくらいの差です。みずみずしい…じゃなくて細々しい違いですよ。」

「…で、何考えてたの?」

「先生は処女って断定してました。」



「あ、小鹿おかえり。」

「…この顔を見て何か思わないのか?」

「ひどい顔だね。かわいそう。」

なんかすっごく罵倒された。多分そういう意図はないんだろうけど。…あるかもしれないけど。こいつ心配より憐みが先に来るのか、現れるのかこいつ。さすが小祭。

…先生、人の顔面を殴るのに迷いがないんだよな。顔がぼっこぼこだ。あの人ホントに教師なのかな?

怖すぎるよ。

なんとか見える目で、探偵事務所の中を見る、内装を見る。

探偵事務所の一応長である俺の無駄にデカい机。文庫本などが積まれている。積まれ、詰められている。

小祭の椅子。古い椅子だ。すこし古びているのがいい。本当は机を置きたがったが、小祭本人が

「私座ってた方が頭使えるから」

とか言って椅子だけ置いている。

デカいホワイトボード。昔取り扱った以来の痕跡などがはっきり残っている。定期的に小祭がここに絵を描いているため、ホワイトボードの半分は小祭のアートの描かれた痕が残っている。小祭はかなり絵がうまい。

風景画とかゆるキャラとかの絵が。

客用のソファと机。勉強用具が置いてある。

どうやら、小祭が篝先輩に勉強を教えているようだ。

「…これは石田県?」

「違いますよ篝先輩。どうやったら北海道の名前を間違えるんですか。」

「あはは、は相変わらずだね。」

ソファには、座っている。小祭楓と、小野天狗篝先輩と…

あれ?この作品の俺以外の高校生探偵はまだ二人じゃなかったか?いつの間に新メンバーが加入したんだ?

「ねぇ篝、あの顔面がボコボコになっている男の子は誰かな?」

「あぁ、は知らないもんね。私の後輩の小鹿くんだ。」

は、ソファから立ち上がりこちらを向いた。

優しそうな笑顔、おしとやかに見える笑顔、吸い込まれそうな美貌。

小笠原消子だ。

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