小笠原消子の捜索は止まらない

「…小笠原おがさわら 消子しょうこさん誘拐事件の真相解明…」

「そうだ。これはかなりの大事件。」

篝先輩は、事難しそうに説明を始める。

「このお話は、失踪事件は一度完結解かれている。…いや、違う。」

打ち切り終わりにされたんだ…と、篝先輩は訂正する。詳細まで聞かされていなかった小祭はじっくりと、静かに話を聞いている。

「今年の四月、消子は失踪したんだ。最初は家出でもしたんじゃないかっていわれてたんだが、両親とはそれといった出来事はなかったらしい。日ごろから自殺の兆候も見られなかったことから、最終的にっていう扱いになったんだよ。」

「でも、小笠原先輩は…」

そう、小笠原先輩は、

私立乙ノ宮高校三年生、バスケ部キャプテン、高身長でありよくモテる優等生。

篝先輩がモテる女性ならば、小笠原先輩はモテる女性だ。

そんな彼女は4月中旬からの2週間ほど、学校に来ていなかった。噂は分散され、一部では死んでしまったのではないかと言う噂もあったほどだ。

しかし、四月の終わり頃に彼女は帰ってきた。その時言ったセリフは、たしか…

「旅に出てました~」だった。

それから小笠原先輩は五月初旬今日まで普通に学校へ来ている。あれは誘拐ではなかったんじゃないのか?

「…消子が誘拐されていたと思う理由は、一つある。」

…ちょっと前までのふざけていた篝先輩はどこへ行ったのかと思うほど、クールに話し続ける篝先輩に、見とれてしまう。

それほど、重い話なのだと理解した。

「それは、『ズレ』だ。話し方も思い出話も基本的に認識のズレはないんだ。変わらず小笠原消子あいつのままなんだよ。」

「…正義感も、行動原理も、倫理観も、主義主張すらも、んだ。」

話してみれば…とは言われたが、そもそも俺は小笠原先輩の事をよく知らない。経歴や人柄は人づてでよく聞くが、実際の小笠原先輩は噂とは異なる人なのかもしれないし。

家に向かおうかとも考えたが、まずは情報を集めるべきだと感じた。そもそも、今日は土曜日なため、小笠原先輩がいない可能性も十分ある。確実に会える日に会いに行こう。

「なぁ小祭。お前って小笠原先輩と接点とかないのか?」

「…ないね。全くと言うほど。皆無と言ってもいいほど会無あったことがないかな。」

最初の間が気になったが、きっと記憶を呼び起こしていたのだろうと自己解釈しておく。…篝先輩は、があると言った。そのズレがどれほどなのか、気になるものだが…。俺たちは一度探偵事務所に帰り、状況を整理しようとしていたところ、

「小鹿くんっ!!!!!!!!!」

後ろから野生の篝先輩が飛び込んできた。この人はどれだけ元気なんだ。俺より身長が高い篝先輩に飛び込まれて、飛び乗られた俺は床に倒れ込んだ。

「いやー、あんなに話すと疲れるものだから、近くの大きいコンビニになにか飲み物を買おうとしていたんだよ。よし、今日は二人に何かおごってあげよう!」

「いや、いいですって。俺たちこの後聞いた話を事務所とかで整理したりしなきゃ…」

全力で篝先輩を拒絶する。絶対めんどくさいことがおこりそうだし…

「?なら、私が事務所までついていけばいいだろう?」

えっ?

「私、まだまだ話せるぞ?スリーサイズとか性癖とか受け攻めとか…」

そういう話は要らないんですけど...

「なんなら、私も高校生探偵の用心棒?にでもなろうではないか!2人とも戦闘の心得は無いように見えるしな。」

...えっ?

「その代わりに、2人には勉強を教えてもらうか!あはは!」

…こうして、頼れる変態先輩が一人、高校生探偵の一員になった。

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