第12話 覚醒

なんか色々申し訳ない感じです。すみません。


************



ドゴォーーーン!!っと大地を揺らすような爆発音が鳴り響いたあと、和希は全力で馬を傾け、斜めに道の方へ走らせる。


走りながら、爆発音のした方に目を遣ると巨大な火柱が上がっていた。



「サラ……すぐに行くからっ!」



少し馬を走らせると馬車が見えてきた。御者が必死の形相で馬を走らせている。


それに向かって馬を飛ばしていくと、馬車の中から男の怒声が聞こえてくる。



「何をしてるっ!!もっと飛ばせっ!」


クズが焦っているのが、すぐに分かった。



「大丈夫ですかっ!何があったんですかっ!」


御者に向かって、俺は声を掛けた。


御者は俺に気付いて、何も言わずに…更に馬車のスピードを上げた。


僕は、あぁ…っと小さく嘆息を吐いた。


その行動は…正解だし、判断は正しい。


でも正しい判断が、必ずしも正しい結果をもたらすとは限らない。


それを人は理不尽というのだと思う。

される側から、する側へ。



あなたが判断を間違えて…馬車を停めてくれたなら、俺はあなたを殺さなかったのに…



馬車なんかより単騎乗りの馬の方が当然早い。

俺はそれから何も言わず、馬を馬車と並走させて…御者席へと飛び乗って…


「あっ・・・」


何かを口にしようとした御者の首をナイフでサッと切り裂いて、そのまま蹴り落とした。


そして、そのまま手綱を引いて馬車のスピードを緩めていく。



「おいっ、何をしているっ!!聞いているのかっ!!返事をしろっ!!どうしたっ!!」


途中、何度もクズの声が聞こえてきて。

俺は何も答えない。


もう何が起きているか…分かってるんだろう。


それよりも…サラの声が何も聞こえないのが心配だった。


大丈夫かって…


すぐに大声で尋ねたかったけど、今下手に声をかけたらクズに何をされるか分からない…


どんどんスピードが落ちて…

もう馬車が止まる寸前…



「ネリーなの゛っ・・・?」


世界で一番愛しい声が聞こえた。


まだ答えちゃいけないと思ったけれど…

我慢が出来なかった。


「うん゛っ…僕だよ…」


「うん゛っ…」


もう一度サラの声が聞こえて…



「あの雑魚治癒師かっ!!こんなコトして、どうなるか…分かっているんだろうなっ!!ゼトはどうしたっ!ゼトっ、早く来いっ!」


その声を無視して、


そして僕は…馬車を止めて…降りる。


それから…僕はナイフをギュッと握り締め、馬車の扉に手をかけた瞬間…



バンッっと扉が開いて、



「ゔぅぁあっ゛ぁぁぁあ゛…」


腹を抑えながら苦悶の表情を浮かべ…馬車から飛び出してきたのは、


クズだった。


僕は何も言わずに…今日3人目の首にナイフを突き立てた。また真っ赤に染まる僕のローブ。


父さんの形見だった白いローブは…今日一日で随分汚れてしまったな…


ふと…そんなことを思いながら…クズを蹴り飛ばして、


すぐに馬車の中に入った。そして…



そこには…血だらけの黒い刀身の短剣を握り締めて、カタカタと震えて…


涙を流しているサラがいた。


「サラ…ごめん゛…待たせちゃった…」



僕は…サラの手を汚させたくなかった。

せめて人だけは…殺させたくなかった。


あまりに自分勝手だけれど…

彼女には綺麗なまま…優し過ぎるままでいて欲しかった。


こんな世界でも…1人くらい…そんな人間が居たって良いはずなのに…



「ゔぅうん゛…来てくれ゛て…あ゛りがと…本当はね゛…怖かったの゛…」


「う゛ん、サラ…いいんだ…全部…僕が弱かったから゛…でも…もう大丈夫だよ…」


僕は…ゆっくりとサラに近づいていった。



「あれ゛っ…ネリー?えっ…えっ…ネリー…なんで…ねぇ、本当に゛…ネリーだよ゛ね…?」



あと少しでサラに触れられる。


そう思った瞬間…サラが…目を見開いて…


僕に尋ねた…



ーーーーーーーーーー



馬車の中で、私は…悪魔と2人きりで・・・


悪魔に身体を触れられた。

すごく…すごく…気持ちが悪かった。


でも私がネリーを守らなきゃって…

そう思って…頑張って…耐えた。


ああ…こんな風になるんだったら…昨日…

ネリーを襲っておけば良かったな…ってすごい後悔した。


最初は髪の毛…

ネリーが綺麗だねって褒めてくれる私の自慢の髪を撫でられた。


ネリーとの思い出が穢された気持ちになった…


私の髪に触れていいのは…ネリーだけなのに…



そして…そのまま髪を耳にかけられて…


「へぇー、変わったカタチの耳をしているんだね?まるで伝承に残る森人の耳みたいじゃないか?肌の色は全然違うけれどね。」


そう…悪魔に言われて…泣きそうになった。


見られちゃった……


私は…産まれた時から耳のカタチがみんなと違っていて…

お父さんから、その耳は人にバレないように隠しておきなさいって言われていたから…


ネリーしか知らない私の秘密だったのに…


また一つ…私の大切な思い出が穢された。


それから…耳を触わられた…


「ん゛っ……やだぁ…そこ…触らない…で…」


変な声が出ちゃって…ネリーにしか…聞かせちゃダメな声なのに…



「あははっ、耳なんかでそんなに感じてしまうんだ?あの治癒師は…君がそんな声を出してしまうことなんて知らないんだろうなぁ?」


悪魔にそう言われて…恥ずかしくて…

涙で目の前が滲んできた…



純粋なネリーは…知っているワケないもん…








私のこの声が…えっちな声だって…




バレてるワケないもん…



依頼完了のご褒美に…



耳マッサージと耳掃除をしてもらってる時…



ネリーは…いつも2時間くらいかけて…

優しく…丁寧に…念入りに…してくれるから…


いつも…ぐずぐずの…とろとろに…


されちゃてるの…バレてないもん…



声だって…


ちゃんと…魔獣の声マネだからねwwって…


誤魔化してるもん゛…





「ふふっ…いいね、その顔。滾ってくるよ。

ほら、これが君をこれから屈服させるモノだよ。ちゃんと触ってごらん。」



それから、悪魔はそう言って…

私の手を掴んで…ズボンの上から…汚いモノを触らされた。


やだ…やだ…やだ…


汚い…汚い…汚い…汚い……汚いよぉ゛…


その感触の悍ましさに…吐きそうになって…



「お゛ぇっ…もっ、もう゛…やだぁ゛・・・」


私の手が…穢されちゃったよ…


私はネリーを守るために…頑張らなきゃいけないのに…


もう嫌だって…


やっぱり…あの時、ネリーと一緒に…戦えば良かったのかなって…後悔して…


涙がポロポロって溢れてきて…


そしたら…




「おいっ!!馬車を全力で前に走らせろっ!死ぬぞっ!!」


突然…

ネリーに暴力を振るった悪魔の仲間の大声が聞こえて、馬車がガタガタって揺れてスピードが上がって…


悪魔の手が私から離れた…


そしたら直ぐに、


ドゴォーーーン!!って大きな音がして…



ああ…私、死んじゃうのかなって思って…



でも…

私の初めてをコイツに奪われるくらいなら…


そっちの方がいいかなぁ…


気持ち悪いの…ずっと続くより…いいかなぁ…


そう思って…そしたら…



私の世界で一番大好きな声が聞こえて…


ウソ…ウソ…ウソ…じゃあ…さっきの爆発音は…

神様が…私達を悪魔から助けてくれたのかな…


嬉しくて…なかなか声が出なくて…


どんどん馬車のスピードが落ちていって…


「ネリーなの゛っ・・・?」


やっと声が出て…


「うん゛っ…僕だよ…」


やっぱり世界で一番大好きな声が返ってきて…


「うん゛っ…」


もう…私は後悔しない。ネリーと一緒に逃げるもん。


そう決めたあと…

隣りにいる悪魔が、なんかごちゃごちゃ言った後、短剣を腰から取り出した。


私がネリーを守るんだ。


そう思った瞬間、身体が動いた。


短剣を握っている悪魔の親指を左手で掴んで…曲げて…悪魔の手から離れた短剣を右手でスッと掴んで…


プスッってお腹に刺して…そのままグリュって手首を回して、そのまま引き抜いた。


なんだか…あまりに自然に身体が動いた。




私は…初めて人を殺したんだ。悪魔だと思っていた男は…それでも人間だった。



「ゔぅぁあっ゛ぁぁぁあ゛…」


叫び声を上げながら…扉から出ていく男…


その首にザクッてナイフが突き刺さった。


ネリーだった。返り血を浴びながら…すごく冷たい目をして…男を蹴り飛ばした。



「サラ…ごめん゛…待たせちゃった…」


目の前にいるのは、ネリー。

返り血で真っ赤に染まったローブを着て。


泣きそうな顔をして、私に微笑んだ。



「ゔぅうん゛…来てくれ゛て…あ゛りがと…本当はね゛…怖かったの゛…」


ネリーが来てくれて…嬉しいのに。


ああ…ネリーは…沢山のモノを捨てて…

ここに来てくれたんだなって…分かって…


悲しかった。



「う゛ん、サラ…いいんだ…全部…僕が弱かったから゛…でも…もう大丈夫だよ…」



???

そう口にしたネリーに違和感を覚えて…


何だろう…


ネリーが…ゆっくりと近づいてきて。


血の匂いに混じって…


甘ったるい…

メスが大好きなオスに付ける匂いがした。



違和感が確信に変わる。



「あれ゛っ…ネリー?えっ…えっ…ネリー…なんで…ねぇ、本当に゛…ネリーだよ゛ね…?」



「うん、そうだよ。どうかしたの?」


ねぇ…ネリー?


女の子は男の変化に敏感なんだよ…?





「じゃあ…ネリーなら…私のネリーなら…

なんで…ネリーから・・・

ーーー私以外のメスの匂いがしてるの…?」



ネリーは…ここに助けに来てくれるまでに…


色々なモノを捨てて…


童貞まで…捨ててきやがった。


意味分からん。何で???



トクンって心臓が脈を打って…


自分の中に眠っていた血が目覚めた。


穏やかな性格のエルフ族にあって…


激情持ちで争いを好む性格で…


闇に堕ちたとされるエルフの一族



『ダークエルフ』



それがアタシに流れる血だったんだ。



どこのメスだか知らないけど…許さねーから。






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