第8話 家庭教師の面影と官能の目覚め
琴音の制服は、ブラウスのボタンまで全て外され、薄い布地がはだけていた。慧の指が琴音の素肌に触れる。その感触は、ひやりとするはずなのに、琴音の熱を持った肌には、まるで炎が燃え移るかのように感じられた。身体の震えは止まらず、意思とは無関係に動く手足に、琴音は抗う術を完全に失っていた。
琴音の脳裏では、過去の記憶が、神酒の濁流によって押し流され、認識できないほどに薄まっていく。悠真の姿も、両親の顔も、もはや鮮明に浮かばない。記憶が「失われている」という認識すら、曖昧になりつつあった。
ブラウスが完全に脱がされ、琴音の身体に残るのは、白いレースのブラジャーとショーツだけになった。Cカップの柔らかな膨らみが、薄い布地越しに露わになる。慧は、琴音の身体をゆっくりと布団の上に寝かせた。柔らかな布団が背中に触れ、琴音の身体は、完全に無防備な状態となる。
慧の掌が、そのブラジャーのカップの上に触れた。冷たいはずのレースが、彼の掌の熱を吸い取り、琴音の肌へと伝えてくる。彼は、その掌全体で、柔らかく、しかし確かな力で乳房を揉み始めた。
「……っ!」
ブラジャーの薄い布地越しに、一条慧の掌の熱が、琴音の乳房にじんわりと伝わってくる。乳腺が刺激されるたびに、琴音の身体の奥底から、ゾクゾクとした電流のような快感が走り抜けた。それは、今まで感じたことのない、甘く、痺れるような感覚だった。身体の中心に、熱い液体が灯るように、官能の灯がともっていくのを感じる。
羞恥心は、もうほとんど残っていない。むしろ、その熱に吸い寄せられるかのように、琴音の身体は彼の掌に委ねられていく。
琴音の意識は、ただ目の前の快感と、一条慧の存在に集中していく。悠真の存在は、琴音の意識から完全に消え去った。代わりに、琴音の脳裏を支配し始めたのは、家庭教師としての一条慧の姿だった。難しい問題も根気強く教えてくれた彼の声、真剣な眼差し、そして、時折見せる優しい笑顔。誠実で、理知的で、仕事には厳しいけれど、常に琴音のことを気遣ってくれる人。
今、目の前にいるのは、あの家庭教師の先生なのだ。彼が琴音の婚約者であり、これから夫となる人なのだという現実が、神酒の作用によって、琴音の意識に強く刷り込まれていく。抵抗しようとするたびに、その印象は強まり、抗う力が失われていく。慧が、琴音の新しい世界の唯一の構成要素となる。琴音は、ただ彼の掌の中で、揺らぎ続ける快感の波に身を任せるしかなかった。
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