第5章 第3話「侵攻開始」



東シナ海上空――

濃い雲を切り裂くように、スレッドゼロ所属の輸送艦〈ヴェルナール〉が航行していた。


「本日目標――沖縄南西の海上拠点。アメリカ軍が設置した臨時要塞〈フォート・ケネディ〉の制圧任務を開始する」

司令室に響く諏訪部静馬の声に、全員が息をのむ。


「敵は電子戦に長けたAC部隊を中心に、複数の防衛システムを配備。短期決戦が望ましい」


「先制攻撃で電子妨害設備を潰す。その隙に主力部隊で制圧するわけだな」

総士が即座に把握し、作戦図を見ながら頷いた。



格納庫では、各機体が出撃準備を整えていた。

佑真はZAIN‐01の胸部ハッチに手を当てる。そこには小さな文字が刻まれていた。


> ZAIN‐01/GN SYSTEM:ACTIVE




「……いざという時は、頼むぞ」

囁くように言うと、佑真はコックピットに乗り込んだ。



同時刻、フォート・ケネディ。

管制室のオペレーターが緊急警報を上げる。


「接近する未確認AC部隊を確認!総数4機、所属不明――!」


「なに? ここはアメリカ正規軍の領域だぞ!何者だ!?」

司令官が怒鳴る間もなく、衛星回線が一時的に遮断された。


「……妨害か? いや、ハッキング!? こんな高速で……!」


スレッドゼロの電子妨害は、裕太のSYLPHID‐04によるものだった。

通信、レーダー、センサー――あらゆる情報が混乱する中、宙を駆ける黒影たち。


「こちらNOESIS‐02、電磁レイヤー突破。敵制御塔の位置をマークした」

総士の報告と同時に、綾杜のVELTINE‐03が狙撃地点に到達する。


「阻害弾、装填完了。視界良好」


彼のスコープに捉えられたのは、敵機の中枢ユニット。

トリガーが引かれ、赤い閃光が唸りを上げた。



「いける……!」

佑真のZAIN‐01が、真っ直ぐ突き進む。


その手に握るのは、新兵装――ZNソードII。

硬質な青白い光が、海面すれすれの空気を裂いてゆく。


「一気に仕掛ける。トランザムは……まだ使わない」


ブースターが爆ぜ、ZAIN‐01が超高速で滑り込んだ。


電撃戦、開始。


――そして、アメリカとの本格戦争の火蓋が今、切られた。




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