第5章 第1話「再設計(リビルド)」


焼津拠点・格納庫第3区画。

深夜にもかかわらず、技術班の作業音が鳴り響いていた。


整備主任・赤沼梓は、自らのタブレットに表示された粒子分布図に目を細める。


「やっぱり……間違いない。安定してる、これ……“回ってる”!」


彼女の指が震える。

数週間前から進めていた試験装置が、ついに“あの現象”を再現したのだ。


それは、トポロジカル欠陥場を模倣した疑似構造体による、高密度粒子の持続生成。

つまり――


「GNドライヴ、仮完成。おめでとうございます、主任」


背後から、若き技術者・七瀬理人が感嘆の声を漏らした。


「まさか……自前で“太陽炉”なんて」


「これは……兵器じゃない。“希望”だよ」


赤沼は目を伏せ、静かに言った。


GN粒子――それは半永久的に生成される特殊な光子であり、理論上ACの出力を極限まで引き出すことができる。

だが最大の鍵は、今日、たった今証明された。


GNドライヴに秘められていた、緊急粒子開放モード。


赤く輝き、全身に残像を引き連れ、目視不可能な速度で敵を翻弄する状態――


その挙動に、赤沼は思わずつぶやいた。


「コード名は……TRANS-AM(トランザム)。どう?」


「カッコよすぎる……!」と理人が笑う。



翌朝。ブリーフィングルームには、パイロット4人が揃っていた。


「GNドライヴ……?」

聞き慣れない単語に、綾杜が眉をひそめる。


「簡単に言えば、これまでの動力の常識をひっくり返すシステムだ。粒子を使って、半永久的に動力を供給できる」


赤沼がホログラムで解説を続ける。


「しかも、緊急時には“トランザム”モードで出力を3倍まで引き上げられる」


「3倍……?」


裕太が目を丸くする。


「一時的だが、機体全体が赤く輝いて残像を撒きながら移動できるの。GN粒子を全開放して、ブーストや装備性能を一気に引き上げるのよ」


「ただし」

静馬が口を挟んだ。


「使用後は、粒子再チャージまで機体性能が大幅に落ちる。“最終手段”として扱え」


佑真は、ふとZAIN‐01の姿を見た。

その背部には、いつのまにか新たな装置が取り付けられていた。


(……これが、トランザムの心臓)


「よくそんなものを……完成させたな」


総士が静かに言う。


「戦争を終わらせたいなら、可能な限りの手段が必要になるわ」


赤沼の言葉に、全員がうなずいた。



こうして、スレッドゼロ全機にGNドライヴが正式搭載された。

次なる戦いの火蓋は、すでに切られようとしている。


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