第4章 第9話「4th Duel:撃ち落とされた夢」

皇海の光剣が、ZAIN‐01を狙い振り下ろされた。

だが佑真はブースターを噴かし、寸前で回避。直線的な攻撃を読み、横へ跳ぶ。


「やればできんじゃねえか。けどよ、反応すんのが精一杯って顔してんな!」


次の瞬間、脚部ミサイルが放たれた。回避運動に集中していた佑真は、防ぎきれず左腰部に爆風を受け、機体が仰け反る。警告音が響く。


(こいつは……“速くて重い”。俺のやり方じゃ、削りきれない)



「……これ以上、“あの頃の俺”でいたくないんだ」


佑真は決意と共に、コックピット端末に指を添えた。画面のロックアイコンが赤く点滅している。

誰にも言わず、赤沼梓にだけこっそり頼み込んだ最後の切り札――


《パージユニット起動:確認します。Y/N》


「……Y、起動」


次の瞬間、ZAIN‐01の両肩・脚部・背面の追加装甲ユニットが爆ぜ飛んだ。

脱ぎ捨てるように軽量化されたボディ。残るはZNソードと牽制用ピストルのみ。


《背部スラスター出力リミッター解除》

《現在出力:最大180%に到達──過負荷注意》


背部の高機動ブースターが赤紫に発光し、周囲の空気が震える。

ZAIN‐01が地を蹴るようにして跳び上がると、空間に残像が走った。


――ギュン!!


「な……なんだ、あれ……!?」


司令室の大型モニター越しに見ていた綾杜が、思わず声を漏らす。


「動きが速すぎる……モニターが、追いきれてない!」


裕太も顔を強張らせ、コンソールに身を乗り出す。


「ブレードしか装備してねえぞ!? 機体データと違う、どうなってんだ!」


「佑真……何を……!」


総士は目を細めながら、喉奥で息を呑む。


戦場では、皇海が動揺していた。


「どこに……っ!」


グランゼム・ドランのセンサーが高速移動するZAIN‐01を捉えきれない。

二刀流の光学剣を構えたまま、皇海は咄嗟に跳躍──だがその瞬間、


「ッ――がはッ!!」


右腕ごと、剣を握ったままのアームユニットが切断され、吹き飛んだ。


「貴様ァ!!」


皇海が左の光剣を振るうが、佑真は姿勢を低くして滑るように接近。

刹那、左腕も一閃。斜め下から斬り裂かれた関節部が爆ぜ、光剣は地面へ落ちた。


「く、くそっ……ッ!」


二本の剣を失い、武装を全て奪われたグランゼム・ドランがよろめく。

それでもブースターで空へ逃れようとするが、その背後には――


「……逃がさない」


佑真のZAIN‐01が追い付き、背中へと飛び乗る。

高速で旋回する空中戦の中、佑真の手に握られたZNソードが輝きを放つ。


「これはお前への復讐じゃない……“俺”の戦いだ!」


ZAIN‐01が勢いよくコックピットへ剣を突き立てた。


機体が膨れ上がり、爆発。

青と白に染まっていた装甲片が、火花と共に宙を舞う。


皇海の機体、グランゼム・ドラン――完全沈黙。



---


戦場の空気が止まったようだった。

モニターの向こうで、誰もが息を呑む。


「……勝った……?」


裕太がようやく呟く。


「……あぁ。完全に……叩き伏せたな」


綾杜が唇を噛んで言う。


総士は無言のまま画面を見つめていたが、静かに一言、吐き出した。


「佑真……お前、もう“昔のまま”じゃねえな」



---


ZAIN‐01は宙に静止し、ブースターを停止。ゆっくりと着地し、炎の残る地面を見下ろしていた。


コックピットの中、佑真はヘルメットを外し、息を吐いた。


「やっと……終わった……な、皇海」


遠くで風が吹き抜けた。


過去を斬った少年は、今、確かに“自分自身”の足で立っていた。





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